パリの窓

自由の国で

香港紙、蘋果日報(アップルデイリー)が休刊に追い込まれ、パリの中国大使館前で抗議集会があった。

主催は、NGO「国境なき記者団」。約10人が集まって棺桶(かんおけ)と花束を置き、「報道の自由の死」を悼むという、ささやかなパフォーマンスだった。異様だったのは、大使館の対応だ。代表がメモの抗議文を読もうとすると、館内から大音響でサイレンを鳴らして妨害した。「脅迫されている」と仏警察に通報したらしく、パトカーまで来た。

どうなるのかと離れて見ていた私に、サングラスにマスク、野球帽といういで立ちの中国人男性が近づいてきた。在仏中国人と思ったらしく、中国語で高圧的に「何をしている」と迫った。仏語で「私は日本人」というと、驚いて立ち去った。パリの中国人亡命者と会ったとき、「われわれは常に監視されている」と話していたのを思い出した。

大使館は18世紀の貴族の館で、静かな高級住宅街にある。突然のサイレン音に住民たちは顔をこわばらせていた。習近平国家主席は最近、「愛される中国」のイメージ作りを指示したそうだが、外国でも異論を封じようとするかたくなさは、自由を尊ぶフランス人にどう映ったか。警官たちは記者団に「逮捕しないのか?」と突っ込まれ、「まあ、次の機会にね」と冗談を飛ばし、帰っていった。(三井美奈)