電力危機は続く〈上〉

既存電源縮小に歯止めかからず 需給逼迫が恒常化

九州電力の苅田発電所=福岡県苅田町
九州電力の苅田発電所=福岡県苅田町

「ここ数年で最も厳しい需給見通しの中、これで万全を期せる」

九州電力の担当者はこう語り、安堵(あんど)の表情を浮かべた。夏本番を控え、電力需給の逼迫(ひっぱく)が再び懸念されている。10年に1度の猛暑を想定すれば、九電管内では需要に対する供給力の7月の予備率は、安定供給の目安とされる8%を下回る6・2%となる見通しだ。一時は3・7%との予測すらあったが、苅田発電所新1号機(福岡県苅田町、出力36万キロワット)などが復帰することで危機は免れそうだ。

改善要因となった苅田新1号機はわずか2カ月前に「退役」したばかりだ。昭和47年には発電機5基(総出力約100万キロワット)を擁する九州最大の発電所だったが、発電効率の低さなどから廃止が続いた。新1号機も4月に長期間運転をしない「計画停止」に入り、万が一に備えた余生を送るはずだった。

そんな発電所の環境は、九電が6月17日に電力需給逼迫への対応の一環として新1号機の計画停止を解除したことで一変した。7月中旬にも再起動が可能になるよう急ピッチの作業が進み、技術者や作業員らがチェックシートを手に慌ただしく動き回る。

計画停止した発電所には再稼働に備え防錆や乾燥処理などが施される。それでも停止が長期化すれば復帰に必要な期間も長くなる。新1号機は約1カ月で稼働可能な状態へと復帰する見込みだが、それは計画停止から2カ月程度と期間が短かったからだ。計画停止から2年を超える豊前発電所2号機(出力50万キロワット)の場合、「一連の作業に約1年がかかる」(担当者)といい、今夏どころか、今冬にも間に合わない。苅田新1号機の早期復帰はタイミングに救われたといえる。

経済産業省資源エネルギー庁のまとめでは令和3~12年度の10年間で、休止を予定する全国の火力発電所は各年度出力ベースで約1800万~2200万キロワットに上る。休止期間が長引くケースが増えれば、それだけ電力逼迫時の即戦力となり得る電源がなくなる。