正恩氏の「おやつれに住民涙…」食糧難の中、激務に耐える指導者演出か

29日、北朝鮮の朝鮮労働党政治局拡大会議で演説する金正恩総書記(朝鮮中央通信=共同)
29日、北朝鮮の朝鮮労働党政治局拡大会議で演説する金正恩総書記(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮国営メディアは30日、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が、前日の党政治局拡大会議で、新型コロナウイルスの防疫対策をめぐり、幹部の怠慢により「国家と人民の安全に大きな危機をもたらす重大な事件」が起きたと叱責する様子を伝えた。数日前には、金氏が「やつれた」姿を心配する住民の声を放送していた。

金氏自身が6月中旬の会議で「人民の食糧事情が切迫している」と食糧難を認める中、幹部の怠慢をしかり、自らも体重を減らすほどの激務をこなして国民に尽くす姿を示した。経済の困窮に伴う国民の不満をそらす狙いがうかがえる。

6月上旬、約1カ月ぶりに公の場に登場した金氏は顔や腕が明らかに痩せ、韓国や米国メディアが健康問題の疑いも指摘していた。

朝鮮中央テレビは25日、金氏が観覧した公演への反応を紹介するニュースの中で、「おやつれになった姿を見たとき、最も胸を痛めた。自然と涙が流れると皆言う」と語る住民の声を報じた。

北朝鮮メディアが最高指導者の体の変化に触れるのは異例だ。ただ、2014年に金氏が足首の手術で一時、姿を見せなかった際は「不自由な体」に言及しており、今回もあえて変化に触れることで「大ごとではない」と健康不安を打ち消す意図がありそうだ。

韓国の情報機関は昨年11月、金氏の体重が年々増え、140キロ台に達したとの分析を示した。金氏が痩せた理由について韓国紙の朝鮮日報は、健康を心配する側近らの懇願で、地方でダイエットを行ったとの消息筋の情報を報じた。

今回の政治局拡大会議では、政治局常務委員や政治局員、書記といった党指導部の交代も行われたが、誰が解任されたかなど詳細は伝えられなかった。

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