福島第1廃炉、柏崎刈羽不祥事…小林新会長で東電改革進むか

小早川智明社長
小早川智明社長

東京電力ホールディングスは29日の株主総会で、前三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏を会長として迎える取締役選任議案を承認した。経済同友会の代表幹事を務め、原発政策にも精通する大物財界人の起用で立て直しを目指すが、福島第1原発の廃炉に向けた対応など課題は山積している。

東電は平成23年の東日本大震災に伴う同原発事故以降、社外から会長を迎えて改革を進めてきた。

24年から企業再生の知見が豊富な弁護士の下河辺(しもこうべ)和彦氏、26年から元JFEHD社長の数土(すど)文夫氏、29年から日立製作所会長兼社長を務めた川村隆氏が会長に就任。数土氏や川村氏は28年の電力自由化を踏まえた営業力強化などに当たったが、小売り事業で苦戦するなど大きな成果を出せなかった。

小林氏は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の運営委員を務め、東電の経営や原発に精通するほか、経営者としての経験も豊富で改革への期待がかかるが、課題は多い。

今年3月には、柏崎刈羽原発(新潟県)で所員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室したほか、核物質の防護不備の判明で、原子力規制委員会は事実上の運転禁止命令を出した。

また、福島第1原発の処理水の海洋放出が決定したが、10年をかけて風評被害の払拭に努めてきた農水産業関係者らへの誠意ある対応が必要で、場合によっては、さらなる風評被害への賠償など、なお重い課題がのしかかる。

外部から就任した会長がなかなか成し遂げられなかった「真の東電改革」を小林体制で具現化できるか。厳しい目が注がれている。(那須慎一)

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