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東芝批判のステレオタイプ 論説副委員長・長谷川秀行

東芝の株主総会出席を前に報道陣のインタビューに答える株主=6月25日、東京都新宿区(酒巻俊介撮影)
東芝の株主総会出席を前に報道陣のインタビューに答える株主=6月25日、東京都新宿区(酒巻俊介撮影)

5月11日付の当欄で、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長の言葉を取り上げた。楽天に対する中国企業の出資には経済安全保障上の懸念がある。そんな批判に対し、三木谷氏が「何をそんなに大騒ぎしているのか全く分からない」と反論したことに疑問を感じたからである。

国際社会の対中警戒感などを踏まえれば企業に経済安保への配慮が求められるのは当然だ。個人情報や技術が海外に漏洩(ろうえい)し、不当に利用されてはいけない。そのためには当局の規制や監視の強化も必須である。

やっかいなのは、この流れがいくつかの企業で混乱の起点となっていることだ。楽天はその一例だが、最近では東芝の経営をめぐる騒動もそうである。東芝経営陣と経済産業省が「物言う株主」である海外投資ファンドによる株主総会の権利行使を妨げたとされる問題だ。外部弁護士の調査報告書が不当な圧力を指摘したのに対し、経産省は経済安保上の正当な対応と反論している。

ここで、その対立の白黒を書きたいわけではない。ただ、市場関係者らが、規制のあり方よりも、口うるさい海外株主を排除する官民の象徴としてこの問題を捉えたり、海外でそうみられる懸念を強調したりすることには引っかかるものがある。

思えば、昨年の外為法改正で外資規制を強化した際もそうだった。その是非をめぐっては、経済安保上の意義よりも投資を妨げるリスクが主たる論点になった。浮かび上がるのは、日本の市場は閉鎖的で不透明だとするステレオタイプの見立てである。政府は対内直接投資の促進を掲げながら、相変わらず官民一体で外資の影響力排除を目論(もくろ)んでいる。そんな紋切り型の批判は、東芝が安全保障に関わる多くの技術を有することを考えれば一面的だろう。

元来、外為法は対外取引を原則自由としており、規制は必要最小限とする立て付けだ。規制対象も業種を細かく指定しており、「国家安全保障」という漠然とした観点で広範に規制の網をかける米国とは大きく異なる。日本の規制は総じて限定的だということを忘れてはならない。

懸念するのは、東芝に限らず、政府が今後、市場論理を優先する外資の批判を恐れ、適切な規制や企業活動の監視に二の足を踏むことだ。むしろ必要なのは、この問題を教訓にし、経済安保に関わる規制の実効性を高める方策を検討することだ。

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