【カイロ=佐藤貴生】アフリカ東部エチオピアの連邦政府は28日、同国北部ティグレ州を拠点とする「ティグレ人民解放戦線」(TPLF)との武力紛争で停戦を宣言した。英BBC放送(電子版)などが報じた。昨年11月に始まった紛争では数千人が死亡、約200万人が家を捨てて避難するなど人道危機が深刻化し、2019年のノーベル平和賞を受賞した連邦政府のアビー首相への非難が国際社会で高まっていた。
ただ、連邦政府は声明で、停戦は農業の繁忙期が終わるまでだと表明。エチオピアでは種まきの時期が5~9月で、秋以降も停戦が維持されるかは不透明だ。国連は今月、520万人が食料不足に陥っているとして、早急に支援すべきだと警告していた。
ティグレ州の州都メケレでは28日、連邦軍の部隊が撤収を開始。代わってTPLFの兵士が街に入り、支持者の住民らと祝う姿が目撃された。
TPLFの主体である少数民族ティグレはエチオピア全人口の約5%に過ぎないが、強力な軍事組織を持ち、1991年に政府との戦闘をへて首都アディスアベバを占拠。中央政界で支配を強化してきた。
国内最大民族オロモの出身で2018年に首相に就任したアビー氏は、中央集権の強化を掲げて与党連合を1つの政党に統合したが、TPLFは参加を拒否。紛争は民族対立や権力闘争の側面もあり、根本的な解決は容易ではないとの指摘も多い。
紛争発生以降、ティグレ州の住民ら約4万5千人が西隣のスーダンに逃れたとされる。同州への電話回線は遮断され、メディアの立ち入りも禁じられるなど、実態把握が困難な状態が続いた。アビー氏は隣国エリトリアとの国境をめぐる対立を解決したとして、ノーベル平和賞を受賞した。