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顧客情報流出…甘かった認識 ジャパネットたかた創業者・高田明⑳

顧客情報流出事件で記者会見に臨む
顧客情報流出事件で記者会見に臨む

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《自社スタジオでの番組収録が始まった。試行錯誤を重ねながら、テレビ通販が軌道に乗っていく》


自社スタジオができたのが平成13年3月で、6月には地上波で生放送をやりました。社内からは放送事故を恐れて、生放送はまだ早いという声が大きかったのですが、僕は停電で放送が止まらない限りは何とかなるとの思いでした。また、放送局も生放送には非常に慎重で、念のために中継車を用意しての対応になりましたので、費用もその分かかりました。しかし、生放送には「今この瞬間」を視聴者と共有できる魅力があります。

19年3月、高知空港で着陸体勢になった旅客機の前輪が出ず、胴体着陸になったときも生放送でした。放送スタートの15秒前に見事に着陸したので、「みなさん、見てましたか。高知の旅客機、よかったですね」とスタジオで喜びの拍手をしながら番組をスタート。リアルタイムで視聴者とつながることで、番組を身近に感じていただけたのではないでしょうか。


《13年の売り上げはラジオ通販時代の10倍以上となる450億円、その後も右肩上がりに伸び続ける。しかし足元によもやの落とし穴が待っていた》


16年3月、毎日新聞の記者の方が会社を訪れてきました。50人ほどの個人情報が記された資料を示して、「御社の顧客名簿ではないか」という。調べてみると、確かにうちの顧客情報なんです。それがどこかで流出していた。記者は「明日の朝刊に掲載されます」と語り、帰っていきました。それにしてもなぜ流出したのか、見当がつきません。個人情報保護法が全面施行される前年です。翌朝、テレビをつけると、どの局でも「ジャパネットで顧客情報流出」と報じていました。

出社すると40人ほどの報道陣が待ち構えており、夕刊に間に合うよう、記者会見を求められました。いつ、どこへ、誰が漏らしたのか、事件の詳細はまったくわかりませんが、お客さまに迷惑をかけた以上、できるだけ早く対応するしかありません。副社長である妻と相談し、事実がはっきりするまで事業は閉め、いくら時間や費用がかかっても、問題の解明と再発防止の体制整備に尽力することを決めました。

会見は午前11時から始まりました。知っている情報をすべて話し、とにかく質問が続く限り、厳しい質問でも全部答えようと臨んだことを覚えています。会見は2時間以上も続きましたが、報道陣の先にいる世の中の皆さまに、会社の思いを伝えることを最優先に考えて答えていました。

テレビショッピング10周年のキャンペーン中で、タレントさんを呼んだ番組も何本か制作し、放送枠も確保していたのですが、すべて中止です。約2カ月間の営業自粛で150億円の減収になりました。その後、警察の捜査が入り、2人の元社員が関与していたことが判明しました。情報に対する認識が甘かったとしかいいようがありません。お客さまをはじめ、メーカーさま、放送局さまに多大なご迷惑をおかけすると同時に、多くの社員にも不安を抱かせていましたので「原点に立ち返ろう」とメッセージを発信しました。その後は監視カメラの設置や「ISMS(インフォメーション・セキュリティー・マネジメント・システム)」という情報関連の認証を取得し、第三者機関のチェックを毎年、受けています。(聞き手 大野正利)

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