露でワクチン「強制」進む 未接種者に不利益

【モスクワ=小野田雄一】新型コロナウイルスの感染状況が悪化しているロシアで、当局がこれまで任意としてきたワクチンの接種を強制する動きが強まっている。首都モスクワ市は28日からワクチン未接種者らの飲食店入店を禁止。政権高官も未接種者が不利益を被ってもかまわないという趣旨の発言を始めた。自国製ワクチンへの不信感から接種に否定的だった市民に接種せざるを得ない状況を作り出し、接種ペースを加速させる思惑だ。

新型コロナ感染者が急増しているモスクワ市は28日から、市内の飲食店への入店を①ワクチン接種者②過去半年以内の新型コロナ感染者③3日以内に受けたPCR検査の陰性者-のみに制限した。これらの確認はQRコードを使用した専用のシステムで行われる。屋外のテラス席であれば、7月11日までQRコードなしでの利用を認める。

同市は今月中旬には、飲食店や食料品店など幅広いサービス業分野の労働者にワクチン接種を義務付けることを決定。雇用主は8月15日までに6割以上の従業員の接種を済ませる必要があり、違反した場合には罰金や営業停止などの処分が科される。同様の措置は地方都市でも始まっている。

モスクワ市の新型コロナ対策本部は今月24日、雇用主がワクチン接種を拒む従業員を無給で休職させることを認めるなど、国民への接種圧力は強まる一方だ。ただ、こうした措置で、ワクチン接種施設には希望者が殺到するようになった。

露政権は従来、ワクチンを接種するか否かは国民個人の判断だとしてきた。しかし、ペスコフ大統領報道官は24日、任意とは呼び難い現状への見解を報道陣に聞かれると、「任意のままだ。なぜなら(接種が嫌なら)仕事を変えられるからだ」と強弁した。ペスコフ氏は22日にも「ワクチン未接種者に働ける場所はない」と述べ、ネット上で「未接種者への差別だ」と反発を呼んでいる。

モスクワ市内のバーで働くアリョーナさん(23)は「この不況で新しい仕事など簡単には見つからない。政府は国民をばかにしている」と憤った。

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