主張

石炭火力の見直し 高性能技術を棄てるのか

先進7カ国首脳会議(G7サミット)は温室効果ガスの排出削減対策を講じていない石炭火力について、輸出支援を年内で打ち切ることで合意した。日本も輸出戦略を見直す方針を決めた。

二酸化炭素(CO2)の排出削減が狙いだが、これにより環境性能の高い最新式の石炭火力も輸出が厳格化される見通しだ。

日本が進める石炭火力の技術開発に水を差す事態が懸念される。現在も石炭火力が主力電源として使われている新興国や発展途上国では、温室ガス排出量が先進国の2倍に達する。

そうした国に日本が高効率な石炭火力の技術を提供し、地球規模で温室ガスを抑えることには重要な意義がある。政府は石炭火力を一律に排除せず、実効性を見据えた戦略を描くべきだ。

会議では議長国の英国が排出削減対策を講じていない石炭火力の輸出支援の中止を求め、各国首脳が合意した。排出削減対策の具体的な内容はこれから詰めるが、燃焼効率が高い石炭火力の輸出支援は継続するとしていた日本政府の立場は修正を余儀なくされる。

石炭火力は液化天然ガス(LNG)火力の2倍相当のCO2を排出し、温暖化防止の観点で欧州を中心に廃止に踏み切る動きが相次いでいる。フランスは2022年、英国が24年、ドイツも38年までの廃止を表明している。

これに対して、原発再稼働が遅れている日本では原発に代わって石炭火力への依存度が高まり、19年度は石炭火力が電源の3割を占めた。政府は昨年、30年度までに旧式の石炭火力を休廃止する方針を決めたが、今回の合意で、日本が得意とする高効率の石炭火力の輸出も難しくなりそうだ。

石炭火力をめぐっては、金融機関による投融資が縮小するなど世界的に包囲網が狭まっており、日本でも新規の建設計画が相次いで白紙撤回された。一方で石炭をガス化して燃焼効率を高め、石炭火力で発生したCO2を地下貯留するなど次世代型の技術開発も急ピッチで進んでいる。

発電コストが安い石炭火力は、アジアやアフリカでは主力電源とされている。そうした中で日本が石炭火力の輸出を全面中止し、技術開発から手を引けば、技術で世界の温暖化対策に貢献する道を封じることになる。政府・与党には賢明な判断が求められる。

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