不屈の88歳、三浦雄一郎さん 富士山5合目で聖火運ぶ - 産経ニュース

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不屈の88歳、三浦雄一郎さん 富士山5合目で聖火運ぶ

東京五輪の聖火リレーは27日、山梨県で行われ、冒険家でプロスキーヤーの三浦雄一郎さん(88)が富士山5合目で聖火をつないだ。70歳を過ぎてから3度のエベレスト登頂を果たし、80歳7カ月で史上最高齢の登頂記録を打ち立てた「超人」だが、今回のリレーはエベレストに匹敵する挑戦だった。昨夏に頸髄(けいずい)硬膜外血腫を発症。一時はほぼ寝たきりとなったが、不屈の精神でこの日を迎え、「聖火のパワーをいただき、私も勇気づけられた。スポーツにはやはり、希望と夢を与える力がある」と感慨深げに語った。

標高約2300メートル。高山病の症状が出る人もいる富士山5合目を、三浦さんは左手でストックを突き、トーチを掲げる右手を次男で元モーグル五輪選手の豪太さん(51)に支えられながら、一歩ずつ踏みしめるように進んだ。「何度も登り、スキーもした大好きな山。このぐらいの標高は全然大丈夫」と笑顔を見せた。

「奇跡的な光景」。見守った長女の恵美里さん(60)はこう語る。昨年6月に頸髄硬膜外血腫を発症、緊急手術を受けた後、医師からは希望を持てるような言葉は聞けなかったからだ。

何らかの原因による出血で頸髄の硬膜外に血腫ができ、それが脊髄を圧迫することで運動まひや感覚障害が起きる「100万人に1人」とされる神経疾患。札幌市内の自宅で夜中、しびれを訴えた三浦さんは救急搬送されて緊急手術を受けたが、下半身と右半身にまひが残った。

2カ月間はほぼ寝たきり状態に。ただ新型コロナウイルス感染拡大の影響で家族すら面会できなかった。そんな中、三浦さんを支えたのは、発症前に決まっていた五輪聖火ランナーとして富士山を走るという目標だった。「必ず治る。治して、富士山に聖火を運ぶ」と決して諦めなかった

リハビリに励む三浦雄一郎さん=令和2年8月(家族撮影、ミウラ・ドルフィンズ提供)
リハビリに励む三浦雄一郎さん=令和2年8月(家族撮影、ミウラ・ドルフィンズ提供)

最先端のロボットスーツを使ったリハビリを取り入れるなど、最善の方法を常に模索した。ほぼ毎日休まずリハビリに励み、立ち上がれるようになったのは半年後。「高齢でもあり、主治医には『リハビリの効果が出るかは何とも言えない』と言われた」と恵美里さんは明かす。しかし、三浦さん自身は「もう一度、自分の足で歩く」と信じて疑わなかった。

8カ月たってようやく、短い距離を自力歩行できるようになり、今年2月末に退院。自宅に戻ると、ジムにも通ってリハビリを重ねた。聖火リレーで手にするのと同じ長さ71センチ、重さ1・2キロの練習用トーチを作り、豪太さんとリレーの練習も。驚異的な回復ぶりに執刀医は「奇跡という言葉は使いたくないが、奇跡的だ」と漏らしたという。

「夢とは幻ではなく、可能性のこと」という三浦さんは、「僕は今、病気で人生の幅が小さくなってしまっているが、諦めてしまえばおしまいだ。希望と夢、目標を持つことで、可能性は広がる」と力を込める。「コロナで1年延び、まだ不安定な要素があるけれど、五輪は選手たちが人生を懸けて臨むもの。そんな素晴らしい機会の一端に関わることができて、本当に幸せだ」と目を細めた。

日本スキー界の草分けだった父、敬三さんは88歳でアルプス・オートルート完全縦走を果たし、101歳で亡くなるまでスキーを楽しんでいた。三浦さんは「今年の冬はスキーをしたい。それからまた、次を考えます」と新たな目標を見据え、目を輝かせた。

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