やっと会えた-。山形県米沢市の山間で目にしたのは、探していた「吾妻の白猿」だった。
体毛は真っ白。まだ子供のようで、母親とみられるサルの後ろを追いかけていく。明らかに群れの他のサルとは姿が異なり、肌は淡いピンク色で、目の色も薄いように見える。見失わないように、シャッターを押し続けた。
山形県と福島県にまたがる吾妻山系では、白い体色を持つ野生の二ホンザルが数年に1度、発見されている。古くは猟師らに迷信として伝わっていたが、昭和13年に初めて捕獲されたとの記録が残っている。
白猿の頭数や生息環境を調査している地元「白猿会」の縮(ちぢみ)文夫会長(83)によると、昭和13年からこれまで吾妻山系で計30頭が確認され、現在は少なくとも6頭が生息しているという。昭和58年には、米沢市の天然記念物に指定された。
10年以上前から撮影したいと思っていた被写体。深い森をすみかにする野生のサルのうえ、頭数が少ないので、狙って出会うのは至難の業。神秘的な容姿と希少性から、いつからか「会えると幸運が訪れる」と言われるようにもなった。今回、縮会長に案内してもらい3日間、山を巡り遭遇できたのは1度だけだった。
一方、課題もある。近年、麓の集落では、サルによる農作物被害が深刻で、追い払いなどの対策も取るが改善せず、天然記念物の白猿以外は駆除の対象にもなっている。
縮会長は「駆除が進めば、将来的に白猿が生まれる系統が途絶えてしまう可能性もある。サルが人里に下りて来ない環境づくりを考えなくてはいけない」と話している。(写真報道局 松本健吾)