香港の言論自由、死の危機 英紙編集者が危惧

FTアジア担当編集者 ジャミール・アンダーリーニ氏(英紙フィナンシャル・タイムズ提供)
FTアジア担当編集者 ジャミール・アンダーリーニ氏(英紙フィナンシャル・タイムズ提供)

英紙フィナンシャル・タイムズのアジア担当編集者、ジャミール・アンダーリーニ氏に香港の大手紙、蘋果日報(アップルデイリー)休刊について考えを聞いた。

私はジャーナリストとして、言論の自由を強く信奉している。26年間続いてきた蘋果日報が発行停止を余儀なくされたのは非常に悲しいことだ。

5年前から香港に赴任し、私は「逃亡犯条例」改正案をめぐる抗議活動や昨年6月に施行された香港国家安全維持法などについて取材をしてきた。これまで、香港当局から現地で取材ができないよう圧力をかけられたり、滞在ビザに絡めて脅かされたりした経験はない。ただ、蘋果日報が休刊に追い込まれた出来事は香港の「報道の自由」をさらに萎縮させるのは間違いない。

今後、香港メディアだけではなく、世界中の報道機関が国安法に違反したと当局にみなされた場合、何かしらの妨害を受ける恐れがあるだろう。香港在住の外国人記者が中国政府を批判すれば、当局から警告を受けたり、強制送還されたりする可能性もある。

一方で、蘋果日報がどんな理由で当局に国安法違反の疑いがかけられたかについて公開されている情報が極めて少ない。

メディアがどのような記事を出せば国安法違反と見なされるかについて全容がつかめておらず、われわれは国安法が取材にどれほどの影響を与えるのかが分からない。今後、香港当局が裁判で提出する証拠を注意深く精査する必要がある。

しかし、国安法の施行からまもなく1年がたつ中、これだけは確かに言える。かつての香港は、政治の意見が活発に交わされるアジアで最も活気のある都市の一つだったが、表現の自由において多くのものが失われてしまった。

今月中旬の先進7カ国首脳会議(G7サミット)で採択された声明では香港の「自由と高度な自治」を尊重するよう要求した。ただ、民主主義国家が声をあげても、香港で自治が失われる状況に何ら良い影響を及ぼしていない厳しい現実がある。

香港当局は今後も、異論を唱える意見をさらに弾圧していくだろう。国安法の影響で言論の自由が完全に死んでしまうリスクもある。そうならないことを心から願っている。

(聞き手 板東和正)

ジャミール・アンダーリーニ 2007年に英紙フィナンシャル・タイムズに入社。北京支局長などを経て、15年にアジア担当編集者に就任。16年から香港に赴任し、現地で取材を続けている。43歳。

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