深層リポート

自民「栃木2区」公認争い 元農水相反旗 野党に追い風

自民党栃木県連の大会で「支部長続投」を宣言する西川公也氏=5日、宇都宮市(山沢義徳撮影)
自民党栃木県連の大会で「支部長続投」を宣言する西川公也氏=5日、宇都宮市(山沢義徳撮影)

秋までに行われる衆院選へ向けて与野党の準備が加速する中、自民党栃木県連では、栃木2区の公認候補選びをめぐり火種がくすぶる。一旦は不出馬を明言した元農林水産相の西川公也氏(78)が、県連による後継候補の公募で長男が選ばれなかった不満から反旗を翻した。栃木2区は県内5選挙区で唯一の立憲民主党の牙城だ。県連内の暗闘が他の選挙区へ波及する可能性もささやかれる。

「円満に決まれば」

4月23日、自民2区支部の会合で西川氏は「後継が円満に決まれば、支部長を交代したい」と表明した。西川氏は直近2回の衆院選で立民の福田昭夫氏(73)に連敗しており、現金授受問題などや年齢も踏まえて交代すべきだとの声が県連内で強まっていた。

西川鎮央氏
西川鎮央氏

表明をうけて県連が5月に行った公募には、西川氏の長男で県議1期目の鎮央(やすお)氏(49)や県出身の官僚ら15人が応募。鎮央氏は記者会見で「地元を熟知した人間を」と訴え、西川氏に近い市町議らも「地元の意向」を尊重するよう申し入れるなど猛アピールを展開した。一部県議には、西川氏が所属する二階派の党幹部から電話での働きかけもあったという。

しかし6月4日、県連選対会議で決まった後継候補は鎮央氏でなく、県議5期目の五十嵐清氏(51)だった。西川氏は「円満な決定ではない」と反発し、自身や鎮央氏が強行出馬する分裂選挙を示唆。翌日の県連大会で「支部長を続ける」と宣言した。

国替えか地元か

五十嵐清氏
五十嵐清氏

五十嵐氏は県議会議長経験者で、県連政調会長を務めるベテランだが、県南部の小山市からの国替えとなる。鎮央氏は2区内のさくら市出身で、一昨年の県議初当選前は父の秘書を務めた。「地元尊重なら鎮央氏」というのが西川氏や支援者の言い分だ。

五十嵐氏は2区内の日光市に転居、県議も辞職して背水の陣を敷いた。「私の政策や『政治とカネ』に関する考え方を説明していけば、有権者の理解を得られるはず」と述べ、疑惑がつきまとう西川氏を暗に批判する。

県連トップの茂木敏充外相は「私は党選対委員長の時に、もっと激しい争いをさばいた」と涼しい顔で評した。

福田昭夫氏
福田昭夫氏

立民の思惑は

収まらない西川氏の頼みは二階俊博幹事長の影響力だ。五十嵐氏擁立の決定に先立つ今月3日、自身に近い県議を伴って二階氏と会談し、支部長の続投を説明。党本部を巻き込む西川氏の動きに、県連内では「野党を利するだけ」と冷ややかな声が上がる。

実際、立民は「2議席は取りたい」(松井正一県連幹事長)と意気込む。念頭にあるのは、自民が一枚岩に程遠い2区の福田氏に加え、五十嵐氏の転出で自民の集票力が下がるとみられる4区。昨年の小山市長選で自民、公明推薦の現職が落選するなど、野党への追い風を感じている。

栃木2区をめぐる内紛がどう決着するか目が離せない。

政党公認候補者】 公認候補者には党から活動費が支給されたり、党所属議員の支援を得られたりする。衆院選選挙区では、無所属の候補者は政見放送を行えず、使用できる選挙カーや広報物が公認候補者より少ないなどの制約がある。そのため公認を得られなかった候補者が無所属で当選し、党から追加公認される例は、中選挙区時代より減った。一方、地方の首長選では、幅広い支持を集めるため無所属での立候補が多い。

記者の独り言】 衆院選選挙区の候補者にとって党公認の有無がいかに大きいか、改めて実感した。現行制度は無所属の候補者に厳しいが、中選挙区制より「政策本位、政党本位」の選挙に近付いたのは確かだろう。ただ、理念の異なる小選挙区制と比例代表制が並立するわかりにくさはぬぐえない。公認権を握る党本部の力が強まり、個々の政治家が小粒になったとも指摘される。完璧な制度があり得ない以上、不断の見直しは欠かせない。(山沢義徳)