コロナ後の少子化戦略急務 人口減少進む日本

総務省が25日に発表した令和2年国勢調査の速報値からは、人口減少が進行している実態が一段と鮮明になった。新型コロナウイルス禍で経済環境が悪化した影響などを受け、人口減少が加速する可能性は高い。少子高齢化という構造的な問題を抱える中で人口減が進めば、社会の活力は奪われ、経済は縮小しかねない。コロナ後の再興に向けた青写真を描く作業が急がれる。(坂井広志)

速報値によると、総人口は5年前の前回調査に続き2回連続の減少となった。興味深いのは世界各国との比較で、日本が戦後初めて上位10位から脱落し、11位となったことだ。人口増減率をみると、人口上位20カ国の中で前回比で減少したのは日本だけだった。

厚生労働省の人口動態統計(概数)によると、2年の出生数は過去最少の84万832人となり、初めて90万人を割って「86万ショック」と言われた前年を簡単に下回った。

婚姻件数は約52万組と戦後最少を記録し、妊娠届は過去最少とみられる約87万件。コロナ禍による経済不安が結婚件数の減少につながり、妊婦や胎児への影響を考えて妊娠、出産を控えた可能性は高い。3年に関し80万人割れを予測する専門家は少なくない。

国立社会保障・人口問題研究所の平成29年推計によると、出生数が80万人を割るのは令和12年と予想していた。3年の出生数が80万人を割れば、少子化は9年前倒しして進んだことになる。そもそも出産適齢期の女性人口が減少傾向にあり、未婚化や晩婚化が進む中、出生数の増加は期待できそうもない。

一方で、65歳以上の高齢者人口は増加傾向をたどり、24年にはピークを迎える。その後、減少に転じても、65歳以上の割合を示す高齢化率は上昇を続け、47年には38・4%に達し、国民の約2・6人に1人が65歳以上という社会が到来すると推計されている。

社会保険などをめぐる現役世代の負担軽減は喫緊の課題であり、だからこそ、政府は高齢者にも一定の負担増を求める全世代型社会保障制度改革を進めた。改革は道半ばだが、新型コロナの影響で雇用や収入面で国民生活は打撃を受け、制度改革をさらに進める機運は消え去った。

ワクチンは徐々にではあるが国民に行き渡りつつある。新型コロナが少子化に拍車をかけている以上、医療制度改革の議論を通じて打ち出された、高齢者でも負担能力に応じて多く負担してもらう「応能負担」の原則に立ち返って、給付と負担の見直しに向けた改革を一層進める必要がある。

今回の国勢調査からは、38道府県で人口が減る一方、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で約80万8千人増え、人口の偏在が進んでいることも判明した。人口5千人未満の町村や、5万人未満の市の数が増えており、地方の過疎化は深刻だ。少子高齢化を背景にした「世代間格差」だけでなく、都市部と過疎地域の「地域間格差」への対応も急務といえる。

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