勇者の物語

長嶋「解任」 巨人低迷スポンサーもそっぽ 虎番疾風録番外編256

巨人・長嶋茂雄監督は4連敗にがっくり
巨人・長嶋茂雄監督は4連敗にがっくり

■勇者の物語(255)

上田の阪急復帰が決まった約1週間後の10月21日、プロ野球界に〝衝撃〟が走った。巨人の長嶋茂雄監督が「解任」されたのである。まさか…と思った。たしかにここ3年間は優勝を逃していた(昭和53年2位、54年5位)。だが、55年の今季は61勝60敗9分けで3位。

長嶋監督のクビが危ない―という噂は夏頃から流れていた。当時、巨人担当だった清水満先輩によると、オールスター休みの7月21日に開かれた正力オーナーとOB会との懇親会でちょっとした〝事件〟が起こっていた。

出席者は水原茂、川上哲治、千葉茂、青田昇、牧野茂、荒川博、金田正一、藤田元司…。低迷する長嶋巨人への建設的な意見を聞くため。重鎮たちの意見は厳しかった。

千葉は「長嶋野球の〝それゆけ、やれゆけ〟じゃあ、もう選手はついてこない」といい、川上も「いまの巨人に期待するものはない」と切り捨てた。そして、隅に座っていた藤田に向かって「そう、次は藤田、君が監督をやれ」と言い出した。突然の指名に「ボクなんか…」と慌てる藤田。正力オーナーも予想外の展開に、長嶋監督を留任させる条件として「Aクラスと勝率5割」をOBたちに示した―という。

10月20日、巨人はシーズン最終戦の広島戦を江川の力投で勝ち、貯金「1」で3位を死守した。条件は達成された。ところが、事態が急転した。日本テレビの小林社長(正力オーナーの義弟)が正力オーナーへ「長嶋君を辞めさせない限り、協力はできない」と詰め寄ったのである。

巨人の低迷で母体である読売新聞や傍系の報知新聞の部数が激減した。それは〝販売の神様〟といわれた読売新聞の務台社長(当時)にとって〝許されざる〟事態。そして、日本テレビの巨人戦の視聴率が落ち込み、これまで巨人戦の中継に順番を待っていたスポンサーも次第にそっぽを向くようになっていた。

なんとかしなければ…。両社の出した結論は「長嶋監督のままでは巨人は勝てない」というものだった。

「その日(20日)の夜、正力オーナーが長嶋さんに、電話で〝すまない。辞めてもらうことになった〟と伝えたんだよ」と清水先輩は振り返った。(敬称略)

■勇者の物語(257)

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