【ビブリオエッセー】本気で始める私の挑戦 「コシノジュンコ56の大丈夫」コシノジュンコ(世界文化社) - 産経ニュース

メインコンテンツ

ビブリオエッセー

本気で始める私の挑戦 「コシノジュンコ56の大丈夫」コシノジュンコ(世界文化社)

真っ黒な表紙に真っ赤な「大丈夫」の文字が力強い。世界的ファッションデザイナーが語る56の「大丈夫」はコロナ禍で不安な毎日になんとも心強い。

「大丈夫。策は無限にある」「大丈夫。逆境をバネに」といくつもの「大丈夫」が並ぶ語録だが例えば「前向きのヴィジョンがあると生きられる」の一言に注目した。では自分は? と問いかけてみたのだ。残念ながら今の自分にヴィジョンと呼べるものはない。

かつては「本を読む」という目標があった。寝食を忘れるほど文学全集を毎日読んだ。だが今は長編を読了後の心の昂ぶりや興奮を味わうことも久しくない。

満たされない思いをコシノさんが励ましてくれた。「ヴィジョン、目標があれば精神力が全然違う。ぶれない。自分はこれをやるんだ!っていう精神状態。目指すべき頂上が見つかると、それが生きる力になるんです」。そうか、目標が生きる力。コシノさんは「夢は成長する」「やればできる。しかし本気でやる」と語っている。改めて長編に挑戦しよう。

思いつくだけでも『嵐が丘』『女の一生』『風と共に去りぬ』『アンナ・カレーニナ』…よみがえる名作に心も弾む。『嵐が丘』の主人公ヒースクリフの心の闇をもう一度たどってみよう。キャサリンへの想いを改めて知りたい。若き日とは違う読書。コシノさんは「大丈夫。今がいちばん若い」と書いていた。

81歳のコシノさんの、前向きなエネルギーに満ちた本だ。最後に「流行にとらわれない」と語っているのも目を引いた。流行を生み出してきた本人の言葉だが、今は自分らしさを生きようというのだ。あれもこれも座右の銘。いい目標ができた。新しい日々を謳歌したい。

兵庫県伊丹市 中西博子(84)