ゴルフ送迎や周遊 空飛び回る〝白ヘリ〟横行

押収された「クリアネット」のパンフレット=警視庁原宿署
押収された「クリアネット」のパンフレット=警視庁原宿署

国の許可を得ずにヘリコプターで客を有料送迎したとして、航空関連会社社長ら2人が今月8日、航空法違反容疑で警視庁に逮捕された。白タクならぬ〝白ヘリ〟ともいえる事件の背景には、許可に必要な審査の厳しさが存在している。同社のヘリは過去に墜落死亡事故を起こしており、無許可での運航は安全性にも大きな問題があると関係者らは危惧する。

相場より低い価格

《東京から車で2時間30分 ヘリで30分 ヘリでゴルフは時短効果抜群》

ヘリ送迎の利便性をうたい動画や画像をSNSにアップしていた東京都港区の航空関連会社「クリアネット」。東京近郊のゴルフ場などにヘリで移動するプランなども紹介していた同社だが、有料送迎は国の許可をとらずに行っていたとして、警視庁保安課が今月、航空法違反で摘発した。

国内でヘリの旅客輸送は近年、富裕層を中心にゴルフ場やレジャー施設へのチャーター需要が伸びつつあるという。ただ、利用客がまだ少ないため単価は高く、1時間1機あたり10万円が相場という。

捜査関係者によると、クリアネットは1時間1機あたり4~5万円程度で運航。1回のフライトで3~4人を乗せ、1人約1万2千円の料金を受け取っていたという。

クリアネットではSNSなどでヘリの動画を投稿し、ヘリオーナーを募集していた(クリアネットのフェイスブックより)
クリアネットではSNSなどでヘリの動画を投稿し、ヘリオーナーを募集していた(クリアネットのフェイスブックより)

富裕層を対象にしていたというが、相場に比べ格安だ。都内のヘリポートから静岡県内のゴルフ場まで30分程度で着くため、かなりの〝お得感〟がある。

ただ、その安さを実現させていたのは、人を乗せて運航する際に必要な「航空運送事業」の許可取得費用を運航に回していた疑いが浮上する。

厳しい申請許可

なぜ許可をとらなかったのか。逮捕されたクリアネット社長の佐藤秀臣容疑者(48)は「許可を受けるのは敷居が高い」と供述。国土交通省による「航空運送事業」審査の厳しさが背景にあったとみられる。

航空評論家の杉江弘氏によると、審査では運航管理のほか、整備体制を特に厳しく確認されるという。一例として、運航ごとの点検▽飛行時間3000時間ごとの点検▽5年に一度の点検修理-など、細かい整備を確実に行うシステムを構築しなければ、許可を取ることは難しいという。

申請には時間もかかる。国交省東京航空局のホームページには、申請から許可が出るまでは「通常2カ月」と記載されているものの、同局は「実際には申請前に事前の調整が必要。2カ月というのは土台があった場合の話」と説明する。

担当者によると、未経験からの参入には、申請に必要な運航や整備の自社規定を作製するのに膨大な時間がかかるといい、「申請前の調整段階で諦める業者もいる」という。

死亡事故や墜落事故

こうした背景から、国内で航空運送事業の許可を得ている業者は計56社にとどまる。業界関係者らは「人を乗せての安全な運航のためには、それだけ厳しい整備体制が必要ということだ」と声をそろえ、無許可での営業を問題視する。

クリアネットの管理するヘリをめぐっては昨年12月、静岡県島田市の山林に墜落し、機長の男性が死亡。今年3月には長野県青木村の道路に墜落し、操縦していた男性ら6人が重軽傷を負った。

平成25年にも、無許可で客を乗せ、富士山や東京スカイツリー上空を遊覧飛行した別の航空関連会社の社長ら2人が警視庁に逮捕されるなど、〝白ヘリ〟事案は決して少なくない。

東京五輪や大阪万博を控え、富裕層向けの輸送ビジネスは成長が予想される中、安全性を軽視した違法業者の撲滅に向けて、国交省による立ち入り調査の強化が求められている。

杉江氏は「国交省も人員を割けないのかもしれないが、再発防止には立ち入り調査の拡充が必要」と警鐘を鳴らしている。(根本和哉)