鑑賞眼

「3年B組皆川先生~2・5時幻目~」ただそこにいるだけで笑える

左から、担任教師の皆川(皆川猿時)、問題児で学級委員の荒川(荒川良々)、同じく学級委員の清宮(清宮レイ)、アイドル志望の池津(池津祥子)=田中亜紀撮影
左から、担任教師の皆川(皆川猿時)、問題児で学級委員の荒川(荒川良々)、同じく学級委員の清宮(清宮レイ)、アイドル志望の池津(池津祥子)=田中亜紀撮影

「目指すのは、そこに〝いる〟だけで理屈抜きに笑える芝居」だという。

元2・5次元俳優の皆川(皆川猿時)は、借金返済のため、問題児だらけの3年B組の担任教師になりすます。なかでも学級委員の荒川(荒川良々(あらかわよしよし))はモンスター。果たして、「誰も欠けることなく生徒を卒業させる」ことはできるのか。

細川徹作・演出。皆川、荒川ら大人計画の人気俳優によるコメディー第3弾。登場人物全員がろくでもない。芸名をそのまま役名に使う作品なので、それぞれ役者としての個性や関係性も透けて笑える。あらすじは、あってないようなものだ。

笑いの仕掛けは至るところにある。上演に先立って皆川が、観客も芝居に巻き込まれること、起立や礼を要求されることを実地で説明した。いわば笑わせやすくする準備運動。コロナ禍にあっても、舞台と客席の心理的な距離の近さにこだわり、観客いじりは健在だった。

ステレオタイプのパロディーも笑いの要素の1つ。刀剣乱舞や弱虫ペダルら本家2・5次元ミュージカルや金八先生など、さまざまな事柄や人物のイメージを誇張し、裏切ってみせる。実在の俳優や政治家も笑いの種だ。もとより〝学園もの〟だという物語自体が、「そんな〇〇がいるか」と言いたくなるような、従来の教師や学生の固定概念を逸脱するところから始まっていた。

17歳の清宮レイ(乃木坂46)以外、出演者全員が分別ある大人たち。それが似合わない学生や教師にふんして、たるんだ腹が目立つ下着姿になったり、理不尽な暴力を振るったり、真剣にその場を全力でふざけていく。そのエネルギーにあてられる。

俳優陣が醸し出す絵面の強烈さには、登場するだけで笑いが起きるほど。「〝現象〟としての笑いを大事にしたい」と、公演前の取材時に皆川が話していたことを思い出した。

7月4日まで。問い合わせは大人計画、03・3327・4312。6月26日午後6時の開演回は、PIA LIVE STREAMとWOWOWオンデマンドでライブ配信が行われる。(三宅令)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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