話の肖像画

ジャパネットたかた創業者・高田明(72)(15)独立、そしてラジオとの出合い

品質とスピードにこだわり、店の看板も「フジカラープリント 23分スピード仕上げ」を強調した
品質とスピードにこだわり、店の看板も「フジカラープリント 23分スピード仕上げ」を強調した

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《昭和61年、実家の「カメラのたかた」から独立した。「ジャパネットたかた」の前身となる「株式会社たかた」の船出には、大手との価格競争という荒波が待ち構えていた》

一般家庭へのカメラの普及に伴い、佐世保にもフィルムの現像とプリントに大手の代理店が進出し、「安さ」でどんどん攻めてきました。1枚35円程度だったプリント代が30円、20円と急落し、「プリント5円」の看板が出たと思ったら、最後は0円に。プリント代は0円でも現像代を高く設定して、そっちで利益を出すのです。大手特有の戦略ですね。

でも大手は安い印画紙を使い、どんどんプリントするので色がよくない。せっかくの子供の写真も顔がつぶれたようになったりしている。佐世保の周辺には有田、伊万里、波佐見と陶器の名産地が多く、陶器が売れるか売れないかは写真にかかってきます。僕は陶器をはじめ、すべての写真を色が悪ければ何回も焼き直すようにしました。また長く保管できるよう印画紙にもこだわるなど、まずは品質で対抗したのです。

次はスピードです。そのころの大手は佐世保で集めたフィルムを福岡まで運んでプリントしていました。写真のお渡しは早くて翌日です。ちょうどそのころ、現像からプリントまでが一体となり、23分という超スピードで仕上げることができる機械が開発されました。これまでは3時間近くかかっていたので、驚異の時間短縮です。これを使えばフィルムを朝、出してくれれば、その日の夕方にはきれいに仕上がった写真をお渡しできるのです。

素晴らしい機械ですが1台800万円もする。三川内(みかわち)店をはじめ、新たに店舗を構えた早岐(はいき)、川棚、黒髪の4店に導入する現金はありません。そこでリースという形でなんとか資金繰りにめどが立ち、全店舗に導入することができました。看板には「今日できます」のうたい文句。結局、プリント代1枚35円でも注文は減りませんでした。大手の価格攻勢は厳しかったのですが、品質とスピードにこだわって対抗しました。危機を乗り越えるためには何かを作り出すしかない。考えに考え、そして動いていけば、時代が助けてくれることを体験しました。

《お店に巡回ラジオがやってきた》

店舗改装や新規出店など節目のとき、NBC長崎放送の巡回ラジオカー「スキッピー」を利用していました。番組中の生放送で、女性リポーターが「佐世保市三川内町のカメラ店『たかた』さんからの中継です。今日は改装記念ですよお、目玉商品は何ですか?」とマイクを向ける。「1人1本フィルム5円(当時の仕入れ値は1本200円)の特別セールをやってますよ」と答えたら、これまで店の前の国道を通過するだけだった車が次々と店に入ってきたんです。ご夫婦と子供合わせて5人で1本ずつ、合計5本を25円で買って帰られたご家族もいました。相当な赤字ですが、それでお店のことを知っていただけるなら安いもんだと考えていました。

あるときは、「先着1000人にお弁当箱をプレゼント」と話したら、行列になったことがありましたね。このようなことを続けていると、ラジオを聞いて来てくれるようになったお客さんが高額カメラを購入してくれましてね。赤字覚悟で宣伝をしていたかいがありました。

ラジオCMも制作しました。CMを流す店と覚えてもらえれば、さらにお客さんが足を運んでくれると思ったからです。キャッチコピーも自分で考案しました。「カメラのたかた、タッタカタ、タッタカタ」、これをプロの方に曲として仕上げてもらった。20万円ほどかかりましたが、長崎県内に自分の店のCMが流れ始め、平成元年には年間売り上げが2億7千万円と県内最大のカメラ店の5億円に迫っていました。(聞き手 大野正利)

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