立憲民主党の枝野幸男代表が共産党との連立政権を否定し、野党連合政権の樹立を求めてきた共産が試練の時を迎えている。閣僚を送る閣内協力は事実上、消滅し、政権協力のあり方は閣外協力を残すだけとなったが、それさえ成就する見通しは立っていない。
「五輪は自然災害ではない。政治の決断で中止できる」
共産機関紙「しんぶん赤旗」は18日付1面で、東京五輪・パラリンピックをめぐる志位和夫委員長の17日の記者会見の発言を大きく報じた。他方、質問が集中した枝野氏の「連立拒否」発言は掲載しなかった。志位氏の会見の約2時間前、枝野氏は連合の幹部会合で「共産とは理念に違いがあるので連立政権は考えていない」と述べたが、そもそもその記事もなかった。
共産は平成27年の安全保障関連法成立を受け「戦争法(安保関連法)を廃止するための国民連合政府」の実現を他の野党に提案。その後の3回の国政選挙で、候補者調整を中心とした野党共闘に取り組んできた。
さらに志位氏は令和元年8月の党創立97周年記念講演会で「野党連合政権にむけた話し合い」の開始を呼びかけ、次期衆院選の協力と絡めて共産を含む野党連合政権への合意を立民に要求。今年4月の衆参の3選挙では独自候補を擁立せず、立民系を支援した。
志位氏は16日の党会合で、野党が全勝した3選挙について「野党が力を合わせれば自民党に勝てることを証明した。今後につながる大きな勝利となった」と強調。投開票直後の枝野氏との党首会談を振り返り「『総選挙での協力に向けた協議を開始する』ことで一致した」と訴えていた。
ところが、協議は一向に始まらず、枝野氏は国会が16日に閉会したとたん、立民最大の支持母体の会合で共産との連立を一方的に否定した。共産側には「われわれを軽視している」(党関係者)との不満がある。
共産は政権協力の姿について、閣内協力と閣外協力のいずれでも構わないとしてきたが、枝野氏の発言で閣内協力の選択肢は消えた形だ。それでも志位氏は直接枝野氏と話すまで現実を受け入れる考えはない。17日の会見では、閣内協力の可能性が消えたとの記者の指摘を認めず、こう語った。
「それも含めてまだ話し合っていないわけだから。本格的にはね。ですから、話し合っていきたいと何度も言っているでしょ」(原川貴郎)