【シンガポール=森浩】国軍がクーデターで実権を握ったミャンマーで、国軍側や支持者が標的となる事件が相次いでいる。国軍系政党を狙った爆弾事件も発生した。多くの事件で犯人は不明だが、市民が武装して国軍に抵抗する動きと連動している可能性がある。国軍は22日に第2の都市マンダレーで武装した市民の掃討作戦に着手。「大規模な内戦」へとエスカレートすることが懸念されている。
ロイター通信によると、最大都市ヤンゴンで18日、国軍系政党、連邦団結発展党(USDP)事務所付近に駐車されていた軍用トラックに仕掛けられた爆弾によって、兵士が死亡。その後、付近で別の爆発があり、市民1人が死亡した。人的被害は出ないケースも含めて、爆発物が設置される事件がヤンゴンを中心に国内で続出している。
目立つのが国軍支持者の殺害事件だ。中部マグウェでは5月31日、行政機関職員ら5人が殺害された。犯行に関与したとされるグループのメンバーは地元メディアに対し、「(5人は)裏切り者で、国軍への情報提供者だった」と話した。
今月16日にはヤンゴンで国軍が任命した行政担当者が射殺された。男性は地域で「デモ隊摘発に協力している」と指摘されていたという。ヤンゴンでは同日、国軍に近いとされた地元教育委員会幹部も射殺された。
民主派で作る国民統一政府(NUG)は5月、国軍に対抗する部隊「国民防衛隊」を結成した。NUGは国内の少数民族武装勢力との連携を図る方針も示している。この動きに呼応した市民の一部が、NUGの管理外で独自に活動を始め、武装勢力から武器提供や訓練を受けるなどし、国軍に対抗する姿勢を強めているという。
国軍は民主派に協力する武装勢力を批判。弾圧による市民の死者が今月21日時点で870人を超える中、武装した市民の摘発を強める構えをみせている。22日にはマンダレーで武装した市民が隠れていたとされる建物の制圧に乗り出し、銃撃戦に発展。国軍の発表によると、市民8人が死亡し、国軍側にも複数のけが人が出た。
不安定化する国内情勢について、国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)は18日の国連総会で「大規模な内戦が起きる可能性が現実味を帯びている」と発言。混乱の激化を懸念している。