20日に宇都宮市の護国会館で開かれた栃木「正論」友の会の第15回講演会は、講師に皇室史学者の倉山満氏を招き、訪れた約150人が耳を傾けた。「今こそ皇室を考える」と題した講演の詳細は、以下の通り。
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政府の安定的な皇位継承を議論する有識者会議が、男系男子による皇位継承を前提に、皇族数の確保策を検討する方針を確認した。
現在は「神武天皇以来の伝統を、悠仁さまが独り背負っている」という状況だ。皇位の継承が安定的に続く保証はなく、皇統の危機をどう回避するか、先人に学ばなくてはならない。
考える際の3原則は「先例・男系・直系」だ。先例を積み重ねてきた結果が伝統であり、どの先例に倣うべきか議論するべきだ。
(江戸時代に皇統の断絶を危惧した)新井白石は、新たに閑院宮家を創設した。もし菅義偉首相が旧宮家を皇籍に復帰させたら300年に1度の功績で、名宰相と呼ばれるだろう。
女系天皇論が(平成17年の皇室典範に関する有識者会議で)出たのは、昭和40年以来長らく皇室に男子が生まれず、将来皇族が一人もいなくなるかもしれないという危機感からだ。悠仁親王殿下がいらっしゃらなかった時代の話で、「もう終わった話」と言える。
皇室はジェンダーや男女平等と無縁だが、あえて語るなら、皇室は「男性排除の世界」と言える。女性は誰でも皇族になるチャンスがあるが、男性は天皇か皇族が父でないとなれない。
つまり男系原則とは「民間人の男性を皇室に入れないための仕組み」だ。その原則を、道鏡も藤原家も足利義満も変えなかった。
将来的に皇族数を確保していくためには、先例に倣って「親王宣下」が望ましい。すなわち戦後、占領軍によって皇籍を離脱させられた旧宮家の復帰だ。ただ昨日まで一般人だった方が皇族になるのではなく、次に生まれた世代から皇族として育てられ、悠仁親王殿下をお支え頂きたい。(山沢義徳)