中国批判の香港紙が経営悪化 数日中「休刊」見通し

香港国家安全維持法(国安法)に基づき、資産を凍結された香港紙、蘋果(ひんか)日報の経営状況が極度に悪化、休刊の危機に追い込まれていることが21日、明らかになった。同紙(電子版)によると、手元の資金だけでは「数週間」しか業務を継続できない。一方、ロイター通信は「数日中」に休刊を迫られると伝えた。

報道によると、蘋果日報を傘下に持つメディアグループ「壱伝媒」は同日、取締役会を開催して対応を協議。当局に対し、給与の支払いに充てるために資産凍結の一部解除を申請、認められなければ裁判所に上訴するとも報じられている。

蘋果日報をめぐっては18日、国安法違反の罪で、壱伝媒の張剣虹(ちょう・けんこう)最高経営責任者(CEO)と、同紙の羅偉光総編集(編集局長)が起訴された際、法人としての蘋果日報や関連の印刷会社など計3社も同じ罪で起訴されている。

当局はまた、国安法の規定に基づき、蘋果日報を含む3社の資産計1800万香港ドル(約2億6000万円)を凍結。取引先の銀行には口座への入金など一切の処理業務を禁じていた。

資産凍結などの措置を受け、蘋果日報は社員約700人の給与の支払いだけでなく、印刷などの業務を継続することも困難な状況に陥った。同紙(電子版)によると、数週間分の資金しか手元にないという。

さらにロイター通信は21日、同紙創業者で服役中の黎智英(れい・ちえい=ジミー・ライ)氏の顧問の話として、状況は深刻で「(業務停止は)数日の問題だ」と報じた。支援をしたくても口座に入金できない状態だという。

1995年創刊の蘋果日報は、昨年6月末の国安法施行後も主要紙の中で唯一、中国を直接批判し続けている。香港の「報道の自由」の象徴ともいえ、中国共産党が〝香港の中国化〟を進める上で障害となっている。(藤本欣也)

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