中国への批判的な報道で知られる香港紙、蘋果(ひんか)日報は21日、香港当局の資産凍結措置が一部解除されるなど経営状況が改善されない限り、26日付をもって休刊する方針を決めた。同紙は香港の報道の自由を象徴するメディアで、中国共産党や香港政府が発行停止に向けて圧力を強めていた。
蘋果日報を傘下に持つメディアグループ「壱伝媒」が21日、取締役会を開催して決めた。蘋果日報(電子版)によると、同紙側はまず当局に対し、給与の支払いに充てるために資産凍結を一部解除するよう申請、認められなければ25日の取締役会で休刊について最終決定する。
香港メディアによると、当局が資産凍結の一部解除を認める可能性は低い。
蘋果日報をめぐっては18日、香港国家安全維持法(国安法)違反の罪で同紙幹部ら2人が起訴された際、法人としての蘋果日報や関連の印刷会社など計3社も同じ罪で起訴された。
当局はまた、国安法の規定に基づき、蘋果日報を含む3社の資産計1800万香港ドル(約2億6000万円)を凍結。取引先の銀行には口座への入金など一切の処理業務を禁じていた。
資産凍結などの措置を受け、蘋果日報は社員約700人の給与の支払いだけでなく、印刷などの業務を継続することも困難な状況に陥った。ロイター通信によると、同紙を支援したくても口座に入金できない状態だという。
1995年創刊の蘋果日報は、昨年6月末の国安法施行後も主要紙の中で唯一、中国を直接批判し続けている。中国共産党が〝香港の中国化〟を進める上で障害となっていた。
加藤勝信官房長官は21日の記者会見で、「香港の民主的な発展の基礎となる言論・報道の自由にもたらす影響について重大な懸念を強めている」と述べた。(藤本欣也)