パブオーナー殺害1週間、父「腹立たしいし悲しい」

稲田真優子さんが殺害されたビルの前には花束や飲み物が供えられ、手を合わせる人が絶えなかった=20日午後、大阪市北区(永田直也撮影)
稲田真優子さんが殺害されたビルの前には花束や飲み物が供えられ、手を合わせる人が絶えなかった=20日午後、大阪市北区(永田直也撮影)

大阪市北区天神橋のビル5階のカラオケパブ「ごまちゃん」店内で、オーナーの稲田真優子(まゆこ)さん(25)=同区=が殺害された事件で、稲田さんの父親(70)が取材に応じ、「容疑者が逮捕されたが、心は晴れない。憎しみしかない」と心境を吐露した。事件は21日で発覚から1週間。店の常連客だった宮本浩志(ひろし)容疑者(56)=殺人容疑で逮捕=は容疑を否認しているとされ、詳しい動機などは明らかになっていない。

「親思いのええ子やった。3カ月に1回くらいは一緒にご飯を食べに行き、気にかけてくれていたのに…」。25歳の若さで命を奪われた娘について、父親はこう言葉を絞り出した。

知人らによると、稲田さんは兵庫県尼崎市出身。高校時代からアルバイトを掛け持ちし、周囲に「自分の店を持ちたい」「家計を助けたい」と話していた。SNSでは、両親とご飯を食べた様子を写真付きで紹介し、「父母元気、最高!」と投稿していた。

今年1月には念願だった自分の店をオープンし、新型コロナウイルス下で懸命に切り盛りしていた。父親の元に異変が知らされたのは事件発覚前日の今月13日。常連客の男性から「(稲田さんが)仕事を休んでいて連絡が取れない」と聞いた。無事を願ったが、翌日に遺体が発見された。

遺体で対面した娘は顔も分からないような状態だった。「人間のすることではない。ただただ腹立たしいし悲しいし、それ以上に今の気持ちに当てはまる言葉がない」。18日に容疑者が逮捕されたが「ほっとするが、心は完全に晴れない。憎しみしかない」と憤った。

4年前から客、しつこく連絡

府警や知人らによると、稲田さんと宮本容疑者の接点は約4年前。稲田さんが大学で心理学を学びながら働いていた大阪市内のカラオケバーでのことだった。

宮本容疑者はカウンターで1人で飲み、接客する稲田さんによくドリンクをすすめていた。アニメ好きな稲田さんに合わせ、アニメソングを歌うことも多かったという。

稲田さんが独立すると、パブの方に頻繁に顔を出していたが、稲田さんは「連絡がしつこくて困っている」「『毎日来なくていい』と言っているのに聞いてくれない」などと周囲に漏らすようになった。

事件当日の11日も店を訪れていた宮本容疑者。稲田さんと女性従業員に見送られ、午後9時ごろに最後の客として店を後にしたとみられる。だが、防犯カメラの映像ではパブのあるビルを出たのは約1時間後。その間に女性従業員はビルを出ており、宮本容疑者がビル内で稲田さんが1人になるタイミングをうかがっていた疑いがある。

遺体には、鋭利な刃物による傷が十数カ所あり、一部は肺を貫通するなどしていた。強固な殺意がうかがえるが、稲田さんの知人の一人は「宮本容疑者は妻子がいる話もしていた。恋愛感情で殺人までするのか」と疑問を口にした。