公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、映画館での上映予定は変更される場合があります。最新の上映予定は、各映画館にお問い合わせください。
「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」
2018年に大ヒットしたサバイバルホラー映画「クワイエット・プレイス」の最新作。音に反応して人類を襲う〝何か〟が現れた「始まりの日」の様子も本作で初めて明らかになる。
〝何か〟によって人類の多くが犠牲となり、文明社会も荒廃し、極限状態を生きるエヴリン一家。最愛の夫と住む家を失ったエヴリン(エミリー・ブラント)は、いつ泣き出すか分からない生まれたばかりの赤ん坊と2人の子供たちを連れ、新たな避難場所を求めて移動するが、無事生き残れるのか…。
不安をあおる映像でいやが応でも緊張感は高まる。劇場で映画を見ていて、思わず椅子から転げそうになったのは本作が初めてだ。半端ない没入感で観客も手に汗握る恐怖感を体験することになるだろう。前作の伏線も随所に登場するので、見ておくことをお勧めする。
監督、脚本は前作に続き、ブラントの夫で劇中、父親役でも出演しているジョン・クラシンスキー。
18日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。1時間37分。(啓)
「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」
長野五輪ジャンプ団体の金メダル獲得を裏から支えたテストジャンパーたちの秘話を描く。監督は「虹色デイズ」などの飯塚健。飯塚には申し訳ないが、演出以前に涙なしには見られない感動の実話だ。
主演は田中圭。その糟糠(そうこう)の妻に土屋太鳳(たお)。人気者の2人も悪くないが、山田裕貴(ゆうき)をはじめ、小坂菜緒、眞栄田郷敦(まえだ・ごうどん)らテストジャンパーの面々がいい。飯塚が、それぞれの力量を巧みに引き出したか。
会場の描写などが、ややスケール感に欠けるかもしれないが、主眼はあくまで人間ドラマだ。
18日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田などで全国公開。1時間54分。(健)
「モータルコンバット」
格闘ゲームの世界を映像にした米映画。龍のあざがあるコール(ルイス・タン)が、世界の命運を懸けた魔界との戦いに巻き込まれる。魔界だ、あざだとくれば中高年は深作欣二(ふかさく・きんじ)が監督した「里見八犬伝」や「魔界転生(まかいてんしょう)」を思い出す。その両方に出ていた真田広之が大活躍だ。忍者として刀やクナイを駆使し、ほぼ主役。浅野忠信も重要な役で出る。監督のサイモン・マッコイドはこれが初の長編。バイオレンスの巨匠、深作とは比べられないが、ひたすら戦士が闘い続けるだけの映画に徹したのは潔い。15歳以上が対象。
18日から東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪ステーションシティシネマなどで全国公開。1時間50分。(健)
「いとみち」
青森県の津軽地方が舞台の青春小説を原作に、同県出身の監督らが撮った〝ご当地〟青春映画。監督、横浜聡子の語り口はバランス感覚に優れ、ユーモアをまじえて「誰もが不安だが、生きるとはそういうこと」とさりげなく伝える。
主人公の高校生、相馬いとを津軽弁も巧みに演じるのは、同県出身でデビュー5年目の駒井蓮(れん)。メイド喫茶でアルバイトをするのはとっぴに思えるが、事情を抱えた大人たちとの出会いが、いとを成長させる。メイド服姿で津軽三味線をかき鳴らす場面は見どころ。豊川悦司(えつし)、黒川芽以(めい)らが周りをがっちりと固める。
18日から青森県で先行公開。25日から東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田などで全国順次公開。1時間56分。(健)