衝撃事件の核心

フェミサイドか ホテル殺人19歳少年の心の深淵

男女2人が刺された東京都立川市のホテル
男女2人が刺された東京都立川市のホテル

東京都立川市のホテルで、白昼男女2人が殺傷される事件が起きた。警視庁に身柄を確保され、殺人未遂容疑で逮捕されたのは、19歳の少年。動機に判然としない点も多く、被害者となった派遣型風俗店の従業員を差別視するような趣旨も供述した。ネット上では女性を狙った「フェミサイド」ではないかという指摘も上がる。少年はなぜ、無関係の女性を巻き込んだ凶行に走ったのか。

無理心中を図ったか

「盗撮です。早く来てください」

1日午後3時半過ぎ、立川市曙町のホテル。一室に入った派遣型風俗店従業員の女性(31)から男性従業員(25)に電話があった。男性が駆け付けると部屋から出てきた少年に突然、腹部を刺された。

現場には血の付いた刃渡り約20センチの包丁が残され、男性は5階の廊下、女性は室内で血だらけで倒れていた。女性の傷は胸を中心に約70カ所にも上り、搬送先の病院で死亡が確認された。警視庁は同日、捜査本部を設置し、殺人事件として捜査を開始した。

発生から約20時間後、事件は動いた。2日午前11時半ごろ、現場から約13キロ離れた羽村市の路上でバイクに乗っていた少年の身柄を確保。右手にトイレットペーパーを巻き、左手にはばんそうこうをはっていた。

逮捕されたのはあきる野市に住む職業不詳の少年(19)。少年は当初、警視庁の調べに対し、「インターネットで人を殺す動画やグロテスクな動画を見て刺激を受け、女性と無理心中する様子を撮影しようと思った」と供述していたという。

女性とは面識がなかったといい、「風俗業をやっている人間はいなくていい。風俗の人はどうでもいい」とも供述しているという。

世界で女性、子供被害

「人生これからなのに本当にかわいそう。なんで殺されなければならなかったのか。本当に残念だ」

女性を知る知人はそう肩を落とした。

《本当に怖かっただろうな…》《一生懸命生きていたのに》《ご冥福をお祈りいたします》

ネット上には突然の凶行に無念にも被害に遭った女性に対する追悼の言葉が相次いだ。

風俗店従業員を無差別に狙った疑いが浮上し、ネット上では、「フェミサイド」ではないかという意見が相次いだ。フェミサイドとは、女性や少女を狙った殺人のことを指す。

世界的に問題視され、国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、2017年にフェミサイドの犠牲となった女性は約8万7000人に上る。

韓国では2016年、ソウルの繁華街、江南駅近くの男女共用トイレで、20代の女性が面識のない男性に殺害される事件が起きた。逮捕された男は「女性を狙った」という趣旨を供述。多くの女性に「被害者は自分だったかもしれない」と衝撃を与えた。

今年3月には、英ロンドンで帰宅途中の女性が殺害され、警察官が逮捕された。事件を受けて英国女性らは夜間外出時の恐怖や嫌がらせをされた経験などをツイートし、多くの共感が広まった。

米国でもアジア系のマッサージ店で銃乱射事件が起き、8人が殺害された。アジア人に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)とみられていたが、逮捕された男は風俗店を憎悪するような供述をしていたという。

凶行への兆候

「(5月)30日の夜は様子がおかしかった。次の日仕事なのになかなか寝ないでゲームをずっとしていた。服装も出勤するのに無理やりまともな格好として黒い服装にした」

少年の母親は事件2日前の夜の少年の様子についてそう語った。

おとなしい性格だったという少年だが、母親によると、高校入学後に「いじめに遭った」と伝えてきたという。以降、感情の起伏が激しくなった。

退学して通信制に編入し、卒業。就職した高齢者施設でもなじめず、上司から病院への受診を打診されるなどし、退職。最近は工場に就職先を見つけたと親族らに話し、事件当日の朝は出勤していったという。

だが、その後、自宅には少年の不採用通知が届いた。就職先が見つかったというのは噓だった。

事件を受けて母親は「申し訳ないという言葉では…なんと申しあげていいのか。親として変化に気づけなくて申し訳ない」。振り絞るような声でそう話した。

(松崎翼、王美慧)