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神が宿る海上のピラミッド 利島(としま 東京都利島村)

三角形が美しく見える利島の宮塚山。島に砂浜はなく、断崖絶壁に囲まれている
三角形が美しく見える利島の宮塚山。島に砂浜はなく、断崖絶壁に囲まれている

東京から南へ約140キロの太平洋に、「海上のピラミッド」と例えられる三角形の利島(としま)がある。島の中央に標高508メートルの宮塚(みやつか)山がそびえ、裾野が海へと広がる。周囲約8キロ、人口約300人で、集落は北部に集中している。

宮塚山は古くから御神体(ごしんたい)とされ、島民に崇拝されてきた。

南部登山口の西側には島民から「一番神様」と呼ばれる阿豆佐和気命本宮(あずさわけのみことほんぐう)があり、東側には「二番神様」の大山小山(おおやまこやま)神社、東部登山口付近には「三番神様」の下上(おりのぼり)神社が鎮座する。正月には一番神様から順に巡拝して山回りをするしきたりがある。観光客も同じルートで登山する人が多い。

これらの神社境域は昭和62年、東京都指定史跡となった。どの神社も山の斜面に沿って丸みのある玉石(たまいし)の階段が置かれ、上部にほこらがある。ほこらの背後は宮塚山だ。

初めて参詣したとき、島そのものがマヤ文明遺跡のピラミッド(神殿)を彷彿(ほうふつ)とさせた。

玉石を積んだ下上神社の境内。参拝は階段の下からしかできない
玉石を積んだ下上神社の境内。参拝は階段の下からしかできない

利島の歴史は古く、北部の大石山遺跡では縄文後期の「柄鏡形敷石(えかがみがたしきいし)住居跡」が発掘された。その柱穴から推測すると、夏至の日没直前の太陽が入り口から差し込むときに、室内の2本の柱の影が重なるように設計されているそうだ。つまり、夏至を知らせる「太陽の家」であったとの仮説が立つ。

また、下上神社の御祭神は宮塚山の噴火を神格化した「島生みの神」と考えられているが、神社の位置や「下上」の名前から太陽の存在が暗示されているともいわれている。古来、島の人たちは太陽と深くつながり、日々の生活や祭事などをしていたのかもしれない。

玉石文化もまた、島を代表する景観の一つだ。先人が長い歳月をかけて、荒波に削られ丸くなった玉石を海岸から運びだし、神社や集落の塀、敷石などに使った。苔(こけ)むした玉石は悠久の時を物語る。

近年は20万本のツバキが島中に咲き誇り、「赤い島」と呼ばれ人気がある。島周辺に群生するミナミバンドウイルカと泳ぐため渡島する人も増えている。

はるか昔から、先人が島の地勢に影響を受けながら独自の信仰や文化を育んできた。その長い歴史を語るには、ほとんどが仮説や想像の域を超えないが、海よりも深く山よりも高いロマンが小さな島にあふれている。

■アクセス 竹芝桟橋(東京)や下田港(静岡)からフェリーや高速船が運航。大島(東京)からヘリで向かう空路もある。

■プロフィル 小林希(こばやし・のぞみ) 昭和57年生まれ、東京都出身。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。1年後に帰国して、『恋する旅女、世界をゆく-29歳、会社を辞めて旅に出た』(幻冬舎文庫)で作家に転身。主に旅、島、猫をテーマに執筆およびフォトグラファーとして活動している。これまで世界60カ国、日本の離島は100島をめぐった。