中国共産党創立100年に合わせ国威発揚 宇宙開発の成果強調

有人宇宙船「神舟12号」を搭載して打ち上げられる運搬ロケット「長征2号F遥12」=17日、中国・酒泉衛星発射センター(新華社=共同)
有人宇宙船「神舟12号」を搭載して打ち上げられる運搬ロケット「長征2号F遥12」=17日、中国・酒泉衛星発射センター(新華社=共同)

【北京=三塚聖平】有人宇宙船「神舟12号」を打ち上げ、来年の完成を目指す独自の宇宙ステーション建設計画を中国がこの時期に進めるのは、国威発揚と共産党への求心力向上が狙いだ。5年に1度の共産党大会を来年秋に控え、習近平国家主席(党総書記)は異例の政権長期化を狙っている。来月の党創立100年に合わせて、宇宙開発の成果を内外に誇る考えだ。

国営中央テレビは、17日の打ち上げの様子を生中継し、大々的に宇宙船の「成功」を伝えた。中国が水爆実験に初成功した1967年6月17日と同じ日に打ち上げられたとして「誇らしい」との報道もあった。

今年5月にも米国に次ぎ2カ国目となる火星の地表探査に成功しているが、党の創立100年というタイミングを狙って宇宙開発を加速したのは明らかだ。

神舟12号でリーダーを務める聶海勝(じょう・かいしょう)飛行士は、打ち上げ前の16日に行った記者会見で「党100年の奮闘の道のりに壮麗な一章を加える」と強調している。

自国主導の宇宙開発を積極化させる「宇宙強国」を掲げる習指導部だが、その目玉のひとつが神舟12号の宇宙飛行士が建設作業にあたる宇宙ステーション「天宮」だ。米国や日本などの15カ国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)は老朽化が進んでおり、24年には運用期限を迎える。

その期限後の状況は不透明で、天宮が唯一の宇宙ステーションとなって存在感を高める可能性がある。

ハイテク分野をめぐって米国との対立長期化が予想される中、宇宙開発でも熾烈(しれつ)な競争が進みそうだ。

ただ、中国の宇宙開発計画をめぐっては、5月上旬に大型ロケット「長征5号B」の残骸が大気圏に再突入しインド洋に落下。安全性や透明性に対する国際社会の懸念を生んでいる。

会員限定記事会員サービス詳細