【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(249)】タイスコア 西本監督の「大ばくち」 新布陣的中 - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(249)

タイスコア 西本監督の「大ばくち」 新布陣的中

第6戦、三回、大野から1号2ランを放ち、手を叩いてベースを回る梨田。手前は仰木コーチ=大阪球場
第6戦、三回、大野から1号2ランを放ち、手を叩いてベースを回る梨田。手前は仰木コーチ=大阪球場

やはり、日本シリーズの〝流れ〟が変わってしまった。

10月31日の第4戦を3―5で落とした近鉄は11月1日の第5戦、山根に2安打完封を許し3連敗。「王手」をかけられ、大阪球場での第6戦を迎えた。

「おい、西本監督はどこへ行ったんや? グラウンドにおらんぞ!」「逃げたんか?」「そんなアホな」

試合前の練習、担当記者たちが慌て始めた。いつもなら打撃ケージの後ろで練習を見ている西本監督の姿がない。

西本監督はバックネット裏の正面「特別室」(別名オーナー室)にいた。椅子に座り、腕を組み、目をつむって瞑(めい)想(そう)、いや、のるかそるかの〝大ばくち〟を必死に考えていた。それは大きく打順を入れ替えることだった。

「昨日の夜、寝る前に考えついた。どうしたら打線にテコ入れができるか。マニエルや。マニエルを歩かされんようにする手立てはこれしかない」

西本監督はここまでの「アーノルド―マニエル―栗橋」のクリーンアップから、4番のマニエルを「3番」に上げ、4番にアーノルド。そして「的確に外野フライを打てる男」という理由で7番の梨田を「5番」に入れる新布陣で試合に臨んだのである。

◇第6戦 11月3日 大阪球場

広島 100 000 001=2

近鉄 013 101 00×=6

(勝)井本2勝1敗 〔敗〕池谷1勝1敗

(本)三村①(井本)梨田①(大野)山本浩①(井本)

新布陣が的中した。三回、先頭の石渡が三遊間を破り、小川がバントで送って1死二塁でマニエル。「また、歩かせる気ぃか」と西本監督が広島ベンチをにらみつける。試合はまだ序盤の三回。投手は左腕の大野。古葉監督は「勝負」に出た。1―1からの3球目、マニエルはコースに逆らわず左翼へ流して勝ち越しのタイムリー。そして2死一塁で5番梨田がバックスクリーンへ1号2ラン。

「これまで何回か追い込まれて正直アカンなと思った。けど、今度は違う。はね返せるという気がした。ファンの声援にオレも選手も奮い立った。あとはみんなの精神力や」

3勝3敗のタイスコア。決着は第7戦に持ち込まれた。(敬称略)