【コロナ直言(9)】知事のコロナ対応「ノミの天井」 兵庫県明石市長・泉房穂氏 - 産経ニュース

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コロナ直言(9)

知事のコロナ対応「ノミの天井」 兵庫県明石市長・泉房穂氏

《新型コロナウイルスの第4波では各地で病床が逼迫(ひっぱく)し、本来入院を必要とする患者が自宅療養を余儀なくされるケースが相次いだ。第4波は収束に向かいつつあるが、第5、第6の波を見据えた病床確保は喫緊の課題だ》

なぜ病床確保が進まないのか。結論から言うと、国と都道府県が責任を果たしていないだけだ。

医療法7条の規定上、知事には病院の許認可権があり、民間病院も含めてベッド数を決めることができる。ところが、医療行政は医師会主導になっている。国と都道府県は本来有している医療権限を事実上、行使できずにいる。医師会に気を使う国、国に気を使う県。そういう両すくみの構造の中で、全国の知事は「(権限の行使が)できない」と思い込んでいる。まさに「ノミの天井」。本当は高く飛べるのに、天井を作られてそこまでしか飛べなくなると、本来持っている能力も発揮できなくなってしまう。

病院の許認可権があるということは、言い換えれば作ることも潰すこともできる、となる。病床確保は形の上では知事からの「お願い」。「潰す」とはあえて言わない。権限というのは、使わずして行使できる状況下において、相手に自分の望みに対する理解を得ていく手段だ。私が知事であればベッド数で(病院側と)交渉する。知事は背景に権限がある中で基本的に頭を下げつつ、人的、金銭的支援を持ち出して交渉すべきだ。

ただ、荒っぽくやってはだめ。権限上できるからといって乱暴に進めると「国の指針に反した」「予定や計画とは違う」となり、行政の裁量権の逸脱・濫用(らんよう)を認定される可能性がある。だから交渉が大切なのだ。

そもそも日本は人口千人当たりの病床数が経済協力開発機構(OECD)の統計では1位。米英に比べて4~5倍のベッド数がある。4~5倍のベッド数があって感染者数は米英の1割未満。それでなぜ、病床が逼迫するのか。昨年の第1波のときは無理だったとしても、すでにそれから1年もたっている。

《第4波では、兵庫県は重症者が一時約100人に上り、重症病床使用率が8割強となった。大阪府は重症病床を最大365床確保したが重症者は一時400人を超過し、一部が軽症・中等症病床で治療継続を強いられた》

兵庫県の重症病床数は昨年7月で110床。やっと今、136になった。私からすれば110からすぐに倍にしろ、ということだ。大阪府も最近急に「重症病床の確保目標最大500床」と増えたが、いきなり増やせるなら最初から順々に増やせばよかったのだ。

大阪や神戸で死者数が多いのは病院に入ることができないから。コロナで重視すべきは感染者数ではなく重症者数と死者数。基本的なポイントは重症病床の確保で、そしてその病床確保の権限は知事にある。(聞き手 倉持亮)

いずみ・ふさほ 東京大教育学部卒。昭和62年にNHK入局、平成9年に弁護士登録。15年の衆院選で初当選し1期2年務めたあと、23年の兵庫県明石市長選で初当選し、現在3期目。

兵庫県明石市の泉房穂市長
兵庫県明石市の泉房穂市長