風を読む

「中国問題」に及び腰の枝野本 論説副委員長・榊原智

日本固有の領土、尖閣諸島
日本固有の領土、尖閣諸島

先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、民主主義国家の連携を強め、さまざまな方策を講じて、専制主義の中国に対抗していく姿勢を打ち出した。

日本にとって中国問題とは、尖閣諸島(沖縄県)などの領域防衛にとどまらない。その存立が日本の平和と繁栄を左右する台湾や、日本の死命を制するシーレーン(海上交通路)が通る南シナ海の問題に加え、経済安全保障、人権、公正な国際秩序の維持など多岐にわたる。

共産党が支配する専制主義、全体主義中国の影響下に入れば自由も独立も平和も失われる。それを防ごうとG7やオーストラリア、インドなどは結束を強めている。菅義偉政権がこれらの国々と協調して、日本と世界の自由、繁栄、平和を守ろうと動いている方向性は正しい。

迫る衆院選を前に気になるのは、野党側の中国観や対中姿勢だ。

野党第一党、立憲民主党の枝野幸男代表の新著「枝野ビジョン 支え合う日本」(文春新書)を読んでみた。前書きで「立憲民主党の個別政策や総選挙に向けた選挙政策を記したものではない」と断っているものの、本の帯では「3・11の教訓から、経済、立憲主義、安全保障まで、7年かけて書き上げた政権構想」と堂々と謳(うた)っている。

力作だったが、中国に関する記述が極めて少ないのには驚いた。

全11章254ページの本書で大小合わせて170以上ある見出しに、「中国」という言葉はなかった。

本文では、終盤の241ページでチベット、新疆ウイグル、香港などを挙げて「近隣地域における人権と民主主義を守るための役割を果たす」としたが、弾圧側の中国政府への言及はない。245ページでようやく「尖閣防衛をはじめ、台湾との関係や香港、新疆ウイグルなどの人権問題、南シナ海などにおける軍事力の増強など、懸案を抱える対中関係においても、米国の抑止力、影響力は重要な意味を持つ」との一文があった。

ほかは84ページで、新型コロナ禍で中国製マスクが品薄になった話くらいしか出てこない。これでは枝野氏の中国問題への見解や重視の度合い、対応策が分からない。政府与党を批判する際の威勢のよさと対照的だ。

政権構想なら中国問題への姿勢をきちんと示した方がいい。立民は日本共産党と親密だが、中国共産党にまで遠慮することはないのである。

会員限定記事会員サービス詳細