大和ハウス杯囲碁十段戦

さらなる精進、視線は世界 許家元十段就位式

【大和ハウス杯第59期十段就位式】賞杯を手に記念撮影に応じる許家元十段=7日午後、東京都新宿区(鴨川一也撮影)
【大和ハウス杯第59期十段就位式】賞杯を手に記念撮影に応じる許家元十段=7日午後、東京都新宿区(鴨川一也撮影)

謝辞に立った許十段は「今期の十段戦はいい内容の碁にしたいと思っていた。ミスもあったが、全体的に自分の力を出すことができた。芝野さんは判断が鋭く、読みも深いので中・終盤に時間を残して、集中して読めるよう心掛けた」と振り返り、「新型コロナウイルス禍のなか、インターネットでの対局が多くなっていたので、盤をはさんでタイトル戦を打てることは幸せだなと、あらためて実感した」と語った。

自身よりさらに若い、10代の棋士が台頭してきていることにも言及。「後れをとらないよう精進して、他の棋戦や国際棋戦でも活躍できるようにしたい」と気を引き締めていた。

就位式には、許十段を取材しようと、複数の台湾メディアも殺到。許十段は式後、取材対応に追われた。

フルセットの死闘 第3局はあわや無勝負

【第1局】(3月2日、大阪商業大学)

大阪府東大阪市の同大で開幕局が行われるのは11年連続。黒番の許がAI(人工知能)搭載ソフトがよく使う打ち方で仕掛けると、中・終盤まで両者が一歩も引かない均衡状態が長く続いた。やや優勢になった場面で芝野に出たミスを、許が見逃さずに仕留め、205手で黒番中押し勝ちした。

【第2局】(3月24日、ホテル&リゾーツ長浜)

滋賀県長浜市で十段戦が実施されるのは初めて。午前中(2時間半)で63手まで進む超速の展開になった。早い段階で優位を築いた芝野がそのまま押し切り、157手で黒番中押し勝ちした。

【第3局】(4月8日、ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよん)

昨年は新型コロナウイルスの影響で開催できなかったため、長野県大町市では2年ぶり27回目の対局。必死の読み比べで、200手に達する前に両者の残り時間はともに1分に。さらに、同じ形が繰り返される「4コウ無勝負」になる可能性もある混沌(こんとん)とした状況。盤面のあちこちにコウが発生する難解な戦いを許が337手の末、黒番4目半勝ちした。

【第4局】(4月20日、日本棋院東京本院)

元来、長考派の許は今期の五番勝負、序盤はできるだけ考慮時間を使わず終盤に残すよう心掛けてきた。中盤までにやや形勢を悪くした本局は、1時間以上残す芝野に対し、許は残り5分に。秒読みに追われるなか許にミスが出たこともあり、芝野が149手で黒番中押し勝ちした。

【第5局】(4月28日、日本棋院東京本院)

6期ぶりに最終局までもつれこみ、あらためて先後を決めるニギリが行われ、許が先(黒)番に。難しい戦いが始まり互いに気合の進行。昼食休憩をはさみ、芝野に1時間4分と今期五番勝負での最長考を強いた。そのあとは一進一退の攻防が続いたが、秒読みに入ったところで芝野に失着があり、195手で許が中押し勝ち。すべて黒番が勝利するシリーズになった。

きょ・かげん 1997(平成9)年、台湾生まれ。小学校卒業後の平成22年に来日、10月にプロを目指す日本棋院の院生になった。採用試験をへて25年に15歳でプロ入り。27年に新人王戦で優勝した。30年の碁聖戦では井山裕太七冠(当時)を3勝0敗のストレートで破り、初の七大タイトルである碁聖を獲得。令和元年に天元戦、2年には王座戦に挑戦した。今年3~4月に開催された「大和ハウス杯 第59期十段戦五番勝負」で芝野虎丸王座を破り、初の十段を獲得した。七大タイトル計2期の規定で、段位が最高位の九段になった。