【コーンウォール(英南西部)=板東和正】米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)は14日、首脳会議をブリュッセルの本部で開いた。NATOは声明で覇権主義を強める中国を「体制上の挑戦」と位置づけた上で、中国の脅威への対処のため、NATO改革に向けた政策文書を承認した。
会議にはバイデン米大統領が初出席。会議では、NATO条約第5条が定める集団防衛について、米国にとって「神聖な義務」であると強調した。トランプ米前政権時代に揺らいだ米欧の結束を確認した。
声明は「中国の野心と自己主張の強い行動は、ルールに基づく国際秩序と同盟の安全保障への体制上の挑戦だ」と明記。ロイター通信によると、首脳声明で中国を正式に非難するのは初めてという。
首脳会議ではロシアだけでなく、中国を「巨大な脅威」と位置づけた政策文書「NATO2030」を承認。今後10年間の行動指針となる新たな「戦略概念」の改定に乗り出し、中国対策を初めて盛り込む。
NATOは2010年の首脳会議で現行の戦略概念を採択し、ミサイル防衛をめぐる対露協力などを盛り込んだ。中国の台頭はこれ以降のことで、ストルテンベルグ氏は今月11日の記者会見で「安全保障上の脅威や課題は多くの点で変化した」と強調した。
バイデン氏は14日、ロシアと中国は「私たちの期待と一致するような行動をとっていない」と批判した。
首脳会議では、米国でロシア発とみられる攻撃の被害が深刻化しているのを受け、新たな「サイバー防衛政策」で合意。軍事活動で排出される温室効果ガスの削減でも一致した。