逆風と闘う「もうひとつのプロ野球」選手たち - 産経ニュース

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逆風と闘う「もうひとつのプロ野球」選手たち

ランニングでウォームアップする選手たち=松山市の「ひめぎんグラウンド」
ランニングでウォームアップする選手たち=松山市の「ひめぎんグラウンド」

プロ野球独立リーグの四国アイランドリーグplus「愛媛マンダリンパイレーツ」では、所属する37人中26人が今年、新加入の選手たちだ。彼らの目標はNPB(日本プロ野球)入り。独立リーグの選手として研鑽(けんさん)を重ねながら、スカウトの目に留まりドラフト会議で指名される日を夢見ている。一流のプレーヤーになるには、体作りも大切とあって、球団では「食育」講習会も行うなどして、選手たちの夢のサポートを続けている。コロナ禍で、大規模イベントが制約を受けるなど、各地のスポーツ選手たちが逆風を受けるなか、もうひとつのプロ野球の選手たちも、がむしゃらに鍛錬を続けている。

日ごろの食事について学ぶ愛媛マンダリンパイレーツの選手たち=愛媛県砥部町
日ごろの食事について学ぶ愛媛マンダリンパイレーツの選手たち=愛媛県砥部町
給料10万円程度

愛媛マンダリンパイレーツは愛媛県内の企業や団体をスポンサーとする「愛媛県民球団」が運営し、毎年、NPBを目指す若者が全国から集まってくる。

給料は月10万円程度で寮生活。食事は自分で賄うのが基本だ。自主的な体作りが重要だが、栄養面など、スポーツ選手としてベストのコンディションを整えることはなかなか難しいのが実情だ。

このため、球団では地元の愛媛調理製菓専門学校の協力を仰ぎ、選手への栄養指導を行うことに。6月2日には講師の栄養士、由良恵子さんによるオンライン講習が行われた。

愛媛県砥部町の文化会館視聴覚室。たくましく日焼けした選手たちが着席し、プロジェクターを使って講習が始まった。

由良さんは「朝食を抜くと栄養不足になり体力が低下してプレーに支障が出る、夕食を抜くと睡眠中のホルモン量が低下して疲労が回復せず、筋肉の修復ができない」と述べ、栄養素をバランスよく取ることの大切さを説明した。

選手たちは真剣な表情でメモを取り「よく足がつるのだが、水分の取り方はどうしたらいいか」などと質問。由良さんは「水分は糖質もナトリウムも入っているスポーツドリンクがよい」と丁寧にアドバイスしていた。

受講後、内野手の仁木淳司選手(22)は「偏ったものしか食べていなかった。献立の中心に野菜を置くことを試したい」。

母親がSNSで献立メニューを送ってくれるという内野手、松本凌弥選手(23)は「ビタミンを取るよう気を付け、病気やけがの予防になるものを食べたい」と話していた。

コロナ禍で試合中止も

四国アイランドリーグplusは、愛媛のほか、徳島インディゴソックス▽香川オリーブガイナーズ▽高知ファイティングドッグス-の計4球団。試合は3~6月の前期、7~9月の後期に分かれ、各34試合を行う。このほか福岡ソフトバンクホークス3軍と各チームが年間8試合を行うなどの交流戦もある。

しかし、コロナ禍でリーグを取り巻く現状は厳しい。昨年は3月に予定していた開幕が6月にずれ込み、1シーズン制で実施。感染拡大に伴う試合の中止も相次いだ。

今年は3月に開幕できたものの、無観客試合となったり、リーグ関係者の感染が判明するなどして、再三、試合中止を余儀なくされた。

松山市の「ひめぎんグラウンド」で練習する愛媛マンダリンパイレーツの選手たち
松山市の「ひめぎんグラウンド」で練習する愛媛マンダリンパイレーツの選手たち
シビアな現実も

チームは若者の集団とあって、明るいムードだが、NPBの指名を受けられるのはごく少数というシビアな現実もある。昨年は四国4球団所属で指名を受けたのは育成枠を含め3人、一昨年は4人だった。

球団では若い選手たちに「野球人としてだけでなく、社会人としても認められる選手になってほしい」と各種講習を実施。

今年は弁護士からSNSの情報発信に関する注意の講習を受けたり、ビジネスマナーの講習も受講。警察官による法令順守、市職員からは、ごみ分別の仕方もレクチャーを受けた。

近い将来、プロ野球をあきらめ別の道に進むことになるかもしれない、という緊張感のなかで、己を磨く選手たち。全体練習が終わった後も、ティー打撃や素振り、ウエートトレーニングに汗を流していた。

仁木選手は「個人として結果を出していきたい。今年でNPBへ行きたい」ときっぱり。外野手で高卒ルーキーの漆原幻汰選手(18)も「1年目で絶対行く」と話し、独立リーグに来た理由を「大学だと4年かかるが、ここでは1年で可能とアドバイスを受けたから」と話した。

球団にはNPB経験者もいる。大阪近鉄の選手だった武藤孝司コーチ(43)▽阪神タイガースから来て野手コーチを兼ねる伊藤隼太選手(32)▽東京ヤクルトスワローズに在籍した平井諒投手(30)▽日本ハムファイターズや阪神タイガースなどで活躍した正田樹投手(39)▽福岡ソフトバンクホークスから来た大本将吾選手(23)もいる。

監督は読売ジャイアンツなどで投手として活躍した河原純一さん(48)。「こちらの目線を、彼らの目線に合わすことを一番に考えている。そして、NPBへ行ってもらいたい」と話す。

独立リーグでは「欠点から目をそむけないという当たり前のことを教えたい」と指摘。「どこの世界でも同じだろうが、課題は頑張ってクリアしないといけない」と話していた。(村上栄一)

愛媛マンダリンパイレーツの河原純一監督=松山市の「ひめぎんグラウンド」
愛媛マンダリンパイレーツの河原純一監督=松山市の「ひめぎんグラウンド」