スポーツ茶論

女子ラグビーの未来 橋本謙太郎

リオデジャネイロ五輪を戦った女子ラグビー日本代表サクラセブンズ=デオドロ競技場(森田達也撮影)
リオデジャネイロ五輪を戦った女子ラグビー日本代表サクラセブンズ=デオドロ競技場(森田達也撮影)

最近、「さよなら私のクラマー」というテレビアニメを楽しみにしている。中学時代は男子の中でサッカーをやっていた女子選手らが高校で仲間と出会い、成長していく物語だ。6月11日からは映画も公開されているこの作品は月刊少年マガジンに2021年1月号まで連載され、講談社によると、コミックスはシリーズ累計180万部を超えるヒット作という。

競技は違うが、男子とともに練習を続けてきた経験がある女子選手が少なくないのがラグビーだ。16年リオデジャネイロ五輪日本代表の横尾千里さんは高校時代、唯一の女性部員として中学の男子ラグビー部員とともに練習していたという。年齢も性別も違う人たちと楕円(だえん)球を追う日々の中、孤独を感じることもあったようで、「ラグビーに対する悩みよりも、環境に対する悩みが多かった」と振り返る。

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少しずつではあるが、女子ラグビーをめぐる状況は変化している。日本ラグビー協会に女子委員会が発足したのは2010年のことだ。その前年に、16年リオデジャネイロ五輪から7人制が五輪競技になることが決まったことを受けての措置だった。男性のスポーツとみられていたラグビー界で、ようやく本格的に女性のための環境整備や普及に目が向けられるようになった。

仕事をしながらラグビーができるチームができ、日本オリンピック委員会(JOC)の就職支援制度「アスナビ」の利用などもあり、社会人になっても競技を続けることができる環境は広がりつつある。その流れを象徴しているのが自衛隊体育学校(PTS)だ。

PTSでは14年から女子7人制選手の育成に乗り出したが、当初は各部隊から集まった未経験者が一定期間練習する「集合訓練」の形で強化。17年にはラグビー班に〝昇格〟し、1年を通じてラグビーのみを行う態勢になった。恵まれた環境に引きつけられ、経験者が集まり始めた。

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新隊員教育などが免除されてすぐに体育学校に所属できる「スーパー高校生枠」で今春加入した秋田若菜(18)もそんな一人だ。

栃木・佐野高2年在学時に上級生を押しのけ、7人制の大会「ワールドスクールセブンズ」に出場するU18女子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)の主将に選出された逸材が目指すのは24年パリ五輪。大学進学を含めさまざまな道を検討した結果、「ウエートトレーニング場やプールも全部敷地内にあり、自分のタイミングで好きに使える。食事も毎食出してもらえるし、偏った食事にならない。一番ラグビーに専念できる」。PTSで五輪を目指すことに決めたという。

午前6時に起床し、消灯は午後11時。チームメートとは住居も同じで息苦しさを感じることもあるはずだ。それでも「毎日ラグビーをやっているのが夢のよう」と笑顔で語る。高校時代は栃木から埼玉のクラブチームに通っていただけに、「環境に対する悩み」がないことのありがたみを感じている様子だ。

09年ごろには約500人といわれた女子ラグビーの競技人口だが、19年度の競技登録者数は5千人超となった。PTSをめぐっては、先月発表された東京五輪の女子7人制日本代表第3次候補にチームから梶木真凜選手が名を連ねた。

パリ五輪を迎える3年後、そしてその先に向け、日本女子ラグビーの環境はどのように変容していくのか。「環境に対する悩み」が少しでも減っていくことを祈りたい。

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