【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(248)】西本監督の誤算遅かった継投 勢い止められず - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(248)

西本監督の誤算遅かった継投 勢い止められず

第3戦、七回のピンチでマウンドに立った山口(左)だったが…。右は西本監督=広島球場
第3戦、七回のピンチでマウンドに立った山口(左)だったが…。右は西本監督=広島球場

スタンドでの取材を終え、記者席に戻ってきた筆者の目の前で〝ドラマ〟が始まった。筆者は評論家、牧野茂の隣に座った。

試合は五回から村田の後を受けた近鉄の柳田がノーヒットピッチング。このまま抑えるかと思われた。ところが七回に広島打線が爆発した。

◇第3戦 10月30日 広島球場

近鉄 200 000 000=2

広島 010 000 20×=3

(勝)池谷1勝 〔敗〕柳田1敗 (S)江夏1S

(本)水谷①(村田)

先頭の山崎隆が右中間二塁打で出塁した。この時、隣の牧野がスコアブックに「山口」と書き込んだ。もちろん、まだ、投手交代のコールはない。

「交代ですか?」と声を掛けると「代え時だね」という。ところが近鉄ベンチは動かなかった。

続くライトルの一ゴロで1死三塁となり、代打の萩原には2―0と追い込みながら痛恨の死球。ここで牧野は再びスコアブックに「山口」と書き込んだ。

「柳田はもう限界」。筆者もそう思った。だが、続投。「ほう」と牧野のタメ息がもれた。1死一、三塁。代打・内田は柳田の初球を中前へ同点タイムリー。ここで近鉄ベンチは山口をマウンドに送った。

同点でなおも1死一、二塁。高橋慶が三遊間を破る。微妙な当たりで「ストップ」をかけた三塁・阿南コーチのジャッジが遅れ、二塁走者の萩原が三本間で憤死。だが、続くギャレットが中前へ勝ち越しのタイムリー。八、九回と江夏が締め、広島が逆転勝ちをおさめた。

「プレーオフと日本シリーズとでは同じ短期決戦でもムードはまるで違う。ましてや圧倒的なカープファンで満員になった広島球場での初登板。いくら強心臓の山口でも緊張する。同点になってからでは勢いを止めるのは難しい。山崎が二塁打したところか、せめて萩原を死球で歩かせたところで代えていれば…」

試合後、西本監督は「山口は悪くなかった。だが、投げた球が強気過ぎた。全部ストライク。そこを狙われてしもた」と唇を噛んだ。

牧野は「大きな1敗、大きな1勝」と表現した。その通り、この一戦はシリーズの流れを大きく変えたのである。(敬称略)