G7首脳声明、民主主義の求心力回復目指す

G7サミットで2日目の討議に臨む菅首相(右手前)ら各国首脳。奥中央はジョンソン英首相、同左は韓国の文在寅大統領=12日、英コーンウォール(AP=共同)
G7サミットで2日目の討議に臨む菅首相(右手前)ら各国首脳。奥中央はジョンソン英首相、同左は韓国の文在寅大統領=12日、英コーンウォール(AP=共同)

【コーンウォール(英南西部)=板東和正】11~13日に開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)は覇権主義的な行動を強める中国に、人権などの価値観重視で対抗する姿勢を打ち出した。少なからぬ国々が中国に引き寄せられる中、民主主義の求心力回復を目指す構えだ。今後は行動が問われることになる。

■新型コロナ

G7は首脳声明で、新型コロナウイルスの世界的大流行を2022年までに「終息させる」目標を掲げ、途上国を中心にワクチン10億回分を今後1年間で供与する方針を表明した。

英統計専門サイトによると、ワクチンを最低1回接種した人口の割合は北米と欧州で3割~4割なのに対し、アジアは約7%、アフリカは約2%。先進国がワクチンの「囲い込み」を批判される間に中国はワクチン提供を通じて途上国への影響力拡大を図ってきた。

G7はワクチン提供拡大で中国に対抗する構えだが、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は流行沈静化には「110億回分が必要」とし、G7の提供分では届かないのは明白だ。途上国が中国への依存度を低下させるには、ワクチンの一段の迅速な提供が求められそうだ。

■インフラ・人権

G7が打ち出したインフラ投資構想も、巨大経済圏構想「一帯一路」を通じた中国の途上国への影響拡大阻止との点でワクチン提供と同一線上にある。投資規模は今後数年間で数千億ドル(数十兆円)となる見通しで、G7は作業部会を設置。今秋までに具体的な提案を受ける方針だ。

一方で世界銀行は35年までに途上国が必要とするインフラ投資を約40兆ドル(約4400兆円)と推計。G7は中国より透明性が高く環境に配慮した支援を目指すが、「投資の条件が厳しくなり途上国が敬遠するリスクもある」(英国の中国問題専門家)との声も出ている。

G7首脳は中国の人権抑圧も議論した。特に新疆(しんきょう)ウイグル自治区について強く「人権の尊重」を要求。自治区で行われているとされる「強制労働」の問題にも言及して、グローバルなサプライチェーンからの「根絶」に向けて取り組む姿勢を表明し、各国の貿易相に供給網の分析を要請することを盛り込んだ。

■気候変動

気候変動問題では温室効果ガス排出量を30年までに10年比でほぼ半減させる方針を確認。排出抑制策がとられていない海外の石炭火力発電に対する政府の新規支援を年内に停止するとした。途上国の気候変動対策支援として年間1千億ドルを拠出する目標達成に向けた貢献強化もうたった。

一方で石炭火力の全廃時期の明示を見送り、ロイター通信によると、途上国支援でも拠出増額を具体的な数値で示したのはカナダとドイツにとどまった。途上国は先進国に一段の積極的な対策を求めており、理解が得られるかは見通せない。

3日間の討議を経て示された首脳声明には「中国の覇権的な動きを確実に止めるには甘い部分も多い」(英与党・保守党の元議員)との声も出ている。