若い頃から、すでに私の中に芽生えていましたが、年齢を重ねるとますます、「けったい」な人物に興味をおぼえるようになりました。国語辞典を引くと、この言葉は「卦体」「怪態」などの漢字をあて、「奇妙なさま。おかしなさま。主に関西地方で用いる」(デジタル大辞泉)などと説明されています。ここでは、現代社会ではもはや消滅してしまったであろう、名誉欲・金銭欲・色欲といった単純な物差しではどうにもこうにも推し測ることができない─くだいて言えば「いったい、何がどうなっているんだ」といった面が多々ある─人物であると解釈して、話を進めてゆきたいと思います。
異形の将軍現る
手前みそで恐縮ですが、振り返れば、徳川慶喜と西郷隆盛に関してはかなりの分量の著作を重ねてきました。これは両人ともに「けったい」なところが多分にあり、面白味を大いに感じさせられたからだと自己分析しています。ただ、西郷も十二分に「けったい」でしたが、慶喜ほど「ぶっ飛び」はしていないような気がします。これは西郷という人物の気質のベースが常識人だったからでしょう。その点、慶喜は気質面でも根本から違っていました。