【コーンウォール(英南西部)=板東和正】先進7カ国首脳会議(G7サミット)は12日、発展途上国でのインフラ整備を支援する新構想で合意した。米政府が発表した。中国の習近平指導部が周辺の途上国などで進めている巨大経済圏構想「一帯一路」への対抗策となる。中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区での少数民族ウイグル族に対する弾圧や人権侵害についても、首脳宣言への明記で最終調整する。
英南西部のコーンウォールで開催しているG7サミットは、民主主義国家間の連携を強め、中国など覇権を強める国家の対外影響力をそぐことで一致し、強い意思を示すことになる。
途上国は「一帯一路」でインフラ建設費用を中国から巨額の借り入れでまかなうケースが多い。発電所や港湾、鉄道建設など工事代金の減免と引き換えに、中国に港湾などの現物供与を迫られるリスクがある。
G7は、安全保障上の観点から看過できないと判断し、途上国のインフラ整備に役割を果たす方針だ。
ウイグル族への弾圧をめぐって、拷問や強制労働などが横行していると指摘されるが、中国は認めていない。最終日の13日に発表する首脳宣言は、ウイグル族の人権侵害で中国を名指し非難する可能性がある。
将来の感染症パンデミック(世界的大流行)に備えてワクチン開発や治療法確立にかかる期間を100日内に短縮する目標も、首脳宣言とともに表明する。
新型コロナウイルス感染症をめぐっては、中国湖北省武漢市で発生が公式に確認されてから、米製薬大手ファイザー製ワクチンの有効性が90%以上になったとする臨床試験(治験)結果が公表されるまで、300日以上もかかっている。
これを100日以内に短縮して、人的、経済的な被害の最小化をめざす。感染症の兆候を早期に捕捉する国際監視網や、世界保健機関(WHO)の機能強化支援も表明する見通しだ。
議長のジョンソン英首相は11日、「真の意味で新型コロナに打ち勝ち、回復するためにはパンデミックが2度と起こらないようにせねばならない」と声明で指摘した。「新型コロナで得た教訓から、これまでとは異なる方法で対応する必要がある」とも強調した。
サミットは11日午後(日本時間同日夜)に開幕。対面形式でのサミット開催は2年ぶりだ。11日は新型コロナ禍からの経済復興などについて協議した。12日は地政学上の課題として地域情勢を討議。民間旅客機を強制着陸させたベラルーシのほか、ロシアや北朝鮮をめぐる問題も協議する。