朝晴れエッセー

頑張れ、走れ、お父さん・6月11日

「お父さん、もっとお腹へっこまさないと!」

一昨年12月に東京2020オリンピック聖火ランナーの当選通知が届いた際、娘から言われた一言だ。お腹の出た聖火ランナーの父は見たくないと。

それから約1年半、家族の励ましもあり週4日のジム通いを続けた。途中オリンピックの延期が発表されたが、ジム通いは止めなかった。

体形が劇的に改善し、最高のコンディションで聖火リレーの5月16日を迎えた。

島根県は知事の聖火リレー中止検討発言もあり、実施が危ぶまれたが、予定通り公道で開催された。

たくさんの人々の思いを乗せ、コロナの収束を祈りながら煌々(こうこう)と燃えるトーチを掲げて走った。沿道ではたくさんの人たちが温かい声援を送ってくれた。

その中に、大きな横断幕を高く掲げ、懸命に応援する妻と娘たちの姿が見えた。横断幕には私の似顔絵と「頑張れ、走れ、お父さん!」の文字が配されていた。

緊急事態宣言下の大阪にいる長男夫婦が、帰省できない代わりに横断幕を作って送ってくれたのだ。

父親の晴れ舞台を目にすることができなかった長男たちの無念を思い、その心遣いに涙が出た。この素晴らしい家族のために、これからの人生を頑張って走り続けようと思った。

栂野(とがの)洋司 61 松江市