阪急はなぜ、近鉄に敗れたのだろう。
かつての恩師・西本監督の胴上げを選手たちはベンチ前に整列して眺めた。
「近鉄は強くなった。以前のようにオタオタせんようになった」とエース山田。そして梶本監督はこう語った。
「とにかく打てなかった。前半で点が欲しかったがそれが取れなかった。やっぱり、先手を取れんというのが敗因だと思う」
チャンスは作るがその後のヒットがでない。プレーオフの3連戦、ことごとく山口に阪急打線はチャンスで封じ込められた。
■第1戦 1―4で迎えた八回、ウイリアムスと笹本の長短打で1点を返し、なおも福本の右前打と簑田の四球で1死満塁。ここで井本をリリーフした山口に島谷が遊ゴロ併殺。
■第2戦 2―5で迎えた八回、1死満塁で高井が2点タイムリー。1点差としなおも1死一、二塁。柳田をリリーフした山口にマルカーノ、河村が打ち取られる。
■第3戦 1―1の同点で迎えた七回、連打と四球で2死満塁。だが、村田をリリーフした山口に笹本が中飛。延長十回には福本のヒットと二盗で2死二塁とするも、簑田が空振りの三振。
この3連戦、阪急は21人の打者が山口に挑んだが、ヒットはわずか1本。第3戦の福本1人だけ。
ネット裏で野村克也はこう分析した。
「これまで阪急と対戦したとき、バッテリーの傾向を見破られるのではないか―という怖さが常に頭にあった。その阪急が3連戦を通じて、はっきり出ていた〝山口の傾向〟、2球目までにストライクを取る―という傾向を見逃していた」
「阪急はリリーフエースの山口の凋落とともにチーム力が落ちたといわれている。だが、そんな表面的なことより、目に見えない部分での力の低下も大きかったと思う」
それは油断なのか、おごりなのか。それとも、投手出身の監督と捕手出身の監督との〝違い〟なのだろうか…。
「まぁ、済んだことはいまさら言ってもはじまらない。いまはただ、近鉄は立派やったと言いたい。チャンピオンにふさわしい力を持っている」
最後は梶本監督らしく、近鉄を称える言葉だった。(敬称略)