人道危機続くエチオピア 紛争拡大、食料不足

【カイロ=佐藤貴生】アフリカ東部エチオピアの武力紛争は発生から半年以上が過ぎても収束せず、国連は今月上旬、520万人が食料不足に陥っており、早急に支援を行う必要があると警告した。アビー首相率いる連邦政府は紛争地域への物資輸送を妨げているとされる。米国政府も性暴力などの人権侵害が拡大しているとして経済などの支援を制限すると表明した。アビー氏は2019年のノーベル平和賞の受賞者だが、評価は急落して国際的非難が強まっている。

民族対立 200万人避難

武力紛争は昨年11月、エチオピアの連邦政府軍と、同国北部ティグレ州を拠点とする「ティグレ人民解放戦線」(TPLF)の間で始まった。ロイター通信などによると同州の戦闘で数千人が死亡、約200万人が家を捨てて避難し、約4万5千人が隣国のスーダンに逃れた。ティグレ州への電話回線は遮断され、メディアの立ち入りも禁じられており、実態把握が困難な状態が続く。

紛争が長期化しているのは、背景に民族対立や権力闘争があるからだ。TPLFの主体である少数民族ティグレは全人口の6%余りにすぎないが強力な軍事組織を持ち、1991年に政府との戦闘を経て首都アディスアベバを占拠。中央政界を牽引(けんいん)して少数民族による支配を強化してきた。これに異議を唱えたのが、国内最大民族オロモの出身で2018年に首相に就任したアビー氏だ。中央集権の強化のため与党連合を1つの政党に統合したが、TPLFは反発して参加を拒否。同氏はTPLFを政界から排除してきたとされる。

ノーベル平和賞のアビー氏評価失墜

紛争には隣国エリトリアもエチオピア連邦政府の側に立って関与している。アビー氏はエリトリアとの国境の村バドメの領有権をめぐる対立を終結させたとしてノーベル平和賞を受賞し、同国との関係を改善。エリトリアはTPLFと敵対しており、兵士が連邦政府軍の制服を着用して戦闘に加わったことが判明している。

エチオピアは80もの民族が混在する多民族国家で、絶えざる紛争の歴史がある。アフリカ諸国の情勢に詳しいエジプトの政治評論家、ハニ・ゴラバ氏は「ティグレ州では民間人の大量殺害や性暴力、強制移住などが行われている」とした上で、「平和賞の受賞者が戦争犯罪に問われる行為をしている」と批判した。

エチオピアでは今月21日に総選挙が行われる予定だが、紛争が続くなかでの実施とあって正当性にも疑問符がつきそうだ。