【話の肖像画】ジャパネットたかた創業者・高田明(72)(2)「長崎の奇跡」 スポーツの力を実感 - 産経ニュース

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ジャパネットたかた創業者・高田明(72)(2)「長崎の奇跡」 スポーツの力を実感

J1昇格を決めた試合で記念ジャケットを披露
J1昇格を決めた試合で記念ジャケットを披露

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《平成29年4月、世間をあっといわせる発表を行った。当時経営危機に陥っていた、J2のサッカークラブ「V・ファーレン長崎」の社長就任だ。クラブの再建が託された》

ジャパネットたかたの後任社長で長男の旭人(あきと)から、「短い期間でいいから、V・ファーレンの経営再建を手伝ってほしい」と頼まれたのが、就任発表の1カ月前でした。ジャパネットはV・ファーレンのメインスポンサーだったのですが、経営の中身はまったくわからず、2年連続黒字だったのが突然、赤字決算見込みと発表され、「どういうことなの」という状態だったのです。

社長の旭人は、ジャパネットがV・ファーレンを完全子会社化して、経営権をもって再建させ、長崎県民やサッカー界のために尽力したいという強い意志を持っていた。その旭人からの依頼に「やってみよう」と引き受けたのです。調べてみると累積赤字は3億円超えで、監督や選手、スタッフへの給与の支払いもままならない状態。Jリーグへのスタジアムの入場者数の水増し報告も判明し、最悪の場合、クラブが消滅するという深刻な状況でした。

《通販事業とはまったく畑違いの仕事のうえ、経営再建という重い責任。しかし不安はなかった》

スポーツには、試合やファンとの交流を通じて、人々の心に明るさやエネルギーを与え、幸せにするというミッション(使命)があります。僕が社長を務めたジャパネットは、商品を売るだけでなく、買ってもらった人たちに商品を通じて感動を味わってもらったり、買った商品によって家族の会話が増えたりして、生活を楽しく、豊かにするということがミッションでした。2つのミッションは「人を幸せにする」ことでつながっており、いっしょだと思ったのです。

ボランチとか、ミッドフィルダーとか、サッカーのポジションさえも知らなかったのですが、そこは組織に入れば学べる。僕がやるべきことは財務状況を改善して選手、スタッフが試合に集中できる環境を整えることと、クラブのミッションを組織に浸透させることでした。

《再建に乗り出して7カ月後の11月11日、連勝を重ねたV・ファーレンは初のJ1昇格を勝ち取った。昇格を決めた試合、約2万2千人の観衆で膨れ上がった本拠地「トランスコスモススタジアム長崎」は歓喜の渦に包まれた。消滅危機からよもやの復活劇は「長崎の奇跡」と称されている》

社長を引き受けたときは選手やスタッフは「このままサッカーを続けることができるのか」、サポーターや県民は「長崎からプロスポーツがなくなるのでは」という気持ちだったと思います。そんな不安が払拭され、別の方面にエネルギーを使わなくてすむようになり、一丸となって試合に打ち込むようになれた。試合を重ねるうちに、そうした変化が見えてきましたね。

4月に受け継いだときはJ1に昇格できる順位ではなかったのですが、徐々にかみ合ってきて、夏以降は13戦負けなしになった。昇格を決めた試合、超満員のスタジアムではあちこちで選手やスタッフ、さらにサポーターが抱き合って涙を流して喜んでいましたが、この一体感に「これこそがスポーツのパワーなんだ」と実感しましたね。実はスタジアムの収容人員は2万人で2千人オーバー。後からお叱りを受けたのですが…。(聞き手 大野正利)

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