政府は9日の経済財政諮問会議で、経済財政運営の指針「骨太の方針」の原案を示した。米中対立が激化する中、経済活動が国の安全保障に直結すると考える経済安全保障の強化を柱に据え、中国人留学生を念頭に先端技術の流出防止策などで具体策を明記した。また、新型コロナウイルス禍で明らかになった医療提供体制の見直し、脱炭素化やデジタル化の加速といった次世代の成長に向けた基盤づくりにも重点を置いた。
技術流出の防止は「外国為替および外国貿易法(外為法)」の運用厳格化が軸だ。現状、国内の大学や研究機関で活動する留学生らは半年以上国内に滞在すれば「居住者」扱いとなり、兵器転用できるような最先端技術を大学などから国の許可なく提供されている。
ただ、中国は留学生や海外派遣した研究者を経由して技術獲得を図っているとされ、こうした〝抜け穴〟を防ぐ。所属先に対し、研究者が外国の資金提供を受け影響下にないかといった情報開示も併せて求める。
このほか、コロナ禍で浮き彫りになった病床不足の対策として、公立と民間の病院が連携し相互に病床を活用できる仕組みを作る。
また脱炭素化では、洋上風力や水素などの重点分野に集中的に投資する方針を掲げた。再生可能エネルギーも国民負担の抑制などを図りつつ、最大限導入するとしている。
遅れが目立つ行政のデジタル化については「今後5年で一気呵成(いっきかせい)に作り上げる」と明記した。5年間で行政手続きの大半をオンライン化する方針だ。
一方、令和7年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する従来の財政健全化目標は堅持する。ただ、コロナ対策で膨らんだ財政赤字が経済財政に与える影響を今年度中に検証し目標に反映することも明記した。