【ビブリオエッセー】「道草料理」は恋愛の魔法 「植物図鑑」有川浩(幻冬舎文庫) - 産経ニュース

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ビブリオエッセー

「道草料理」は恋愛の魔法 「植物図鑑」有川浩(幻冬舎文庫)

この小説、マンションの前に行き倒れていた若い男、イツキを主人公のさやかが親切心で独り暮らしの家に上げる場面から始まる。もし自分の娘がこんなきっかけで男性を家に上げたら…。きっと説教することだろう。しかし、読み進むうちに青春のキュンキュンする気持ちを思い出させてくれるラブコメとわかり、すっかり引き込まれ、さやかを応援していた。

二人で野草を摘みに行って一緒に料理する中で二人の関係が深まってくる。要は散歩と料理が中心のお話なのだが、私は春の野に咲く花々を摘んで花かんむりを作る場面に心惹かれた。タンポポやシロツメクサなどの草花が咲き誇る原っぱを前にして花かんむりを作りたいと思わない女性は少ないだろう。その気持ちをばかにせずに受け入れてくれる男性も案外少ない気がする。野草に詳しく料理がうまく、イツキには女性の求める素敵な男性のエッセンスが詰め込まれている。

そしてこの本のもう一つの魅力。巻頭ページに、お話に出てくる野草のカラー写真がずらりと並んでいるのだ。さらに巻末には特別付録として、ヨモギのチヂミなど、これもお話に出てくる「道草料理」のレシピが載っている。

この小説を読めば三密を避けた健康づくりのウオーキングが楽しくなること、間違いない。この春、私もレシピにあったノビルのパスタを思わず作ってしまった。恋愛というスパイスには欠けるが、それでも季節の風味というスパイスはしっかり効いていた。

散歩のお供にも楽しい本だ。ただし若い女子の皆さん、くれぐれも深夜に見知らぬ男性を部屋に上げるのはよく考えてね。