立憲民主党の枝野幸男代表は9日の党首討論で、新型コロナウイルス禍で東京五輪・パラリンピックを開催する根拠を菅義偉首相(自民党総裁)にただし、16日に会期末を迎える今国会の会期の大幅延長を求めた。終了後、記者団に首相は「ゼロ回答」だったと強調。10日に野党党首会談を開いて内閣不信任決議案提出も含めて協議する予定で、決議案提出に踏み切る公算が大きくなった。
枝野氏は意識的に早口の批判モードを抑え、安定感を演出。党首討論では五輪に関し「首相が言う『国民の命と健康を守る』というのは、開催を契機に国内で感染が広がる事態を招かないという意味か」と質問した。首相が感染対策を徹底すると説明した上で「希望と勇気を伝えたい」と語ると、枝野氏は「その答えで本当に命と暮らしを守れるのか」と主張した。
内閣不信任決議案は衆院解散・総選挙を事実上求めるものだ。枝野氏はかねて提出を検討しており、党首討論の内容を踏まえて判断する構えで臨んだ。
討論では、説得力のある五輪開催の理由▽会期延長に応じる意向▽コロナ対策の補正予算案の早期編成への前向きな姿勢-を首相が語るか否かを重視した。だが、首相は会期延長について「国会で決めていただきたい」と応じ、補正予算案にも否定的だった。枝野氏は討論の最後に「危機感や責任感を感じられなかった。政権を変えるしかないと確信した」と述べ、提出に前向きな姿勢を示した。
終了後、10日に党首会談を開くべく共産、国民民主両党と調整するよう安住淳国対委員長に指示。記者団には提出について明言を避けつつ「政権を変えるしかない」と再び強調した。
10日の党首会談では、3カ月程度の会期延長の動議を衆院に提出する方針を確認するとみられる。与党の反対多数で動議が否決されるのはほぼ確実で、これを受けて決議案提出を決断する見通しだ。国民民主党の玉木雄一郎代表も提出論を唱えている。
一方、共産党の志位和夫委員長は9日の記者会見で「感染状況などもよく考慮しなければならない」と慎重姿勢をと慎重姿勢をにじませた。(田中一世)