コロナ その時、

(32)ワクチン接種混乱、変異株で死者が 2021年3月1日~

3月11日で東日本大震災から10年を迎えた日本は、新型コロナウイルス禍という新たな国難と苦闘していた。緊急事態宣言の「出口」をめぐっても迷走し、政府は病床使用率の改善などを受け全面解除にめどをつけたが、首都圏の知事の間では不協和音が生じた。ワクチン接種をめぐってもトラブルが頻発した。

東北を中心に未曽有の被害をもたらした東日本大震災から10年の節目を迎えた3月11日。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県に緊急事態宣言が出ていたが、政府主催の追悼式が同日、2年ぶりに東京都千代田区の国立劇場で開かれた。

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皇太子時代も含めて初めてのご臨席となる天皇陛下はお言葉で、犠牲者に哀悼の意を表された。被災者代表で岩手県宮古市出身の近江智春(ちはる)さんは「10年が経過しても、あの悲しみは決して癒えることはありませんが、私たちの手で大好きなまちを守り、未来に向けて進んでいきたいと思います」と決意を述べた。

日本各地で鎮魂の祈りがささげられ、海外の要人からも追悼の言葉が寄せられた。忍耐強く冷静な被災者らの行動は海外から称賛され、連帯感を生み出した。それから10年。復興は進んだが、日本は新型コロナウイルス禍という危機に対して国力を発揮できず、もがいていた。

緊急事態宣言の出口戦略も迷走した。政府は5日、首都圏を対象にした宣言を21日まで2週間延長することを決定。だが、水面下では「ワンボイス」の協調を打ち出していた1都3県の知事に不協和音が生じていた。神奈川県の黒岩祐治知事は7日のテレビ番組で、東京都の小池百合子知事が宣言延長について「他の知事たちも賛成している」と虚偽の説明をしていたことを暴露し、小池氏は謝罪に追い込まれた。

ワクチン 海外では着々

事態を打開する特効薬として期待されるワクチンをめぐる状況も混迷していた。米ファイザー製のワクチンは次々に到着し始めていたものの、接種をめぐるトラブルが相次いだ。

先行接種を行っている医療機関の冷凍庫が故障して低温保管できなくなり、172瓶(最大接種1032回分)が使用不能になったことが1日に判明。宇治徳洲会病院(京都府)は8日、先端部に薬液が残りにくいインスリン用注射器を使うことで条件が合えば7回接種が可能と発表したことを受け、河野太郎ワクチン担当相は9日、調達を検討する意向を示したが、わずか2日後に方針を撤回。糖尿病患者への対応を優先するとの理由だったが、その場しのぎの政府の対応は、接種が本格化する今後に不安をのぞかせた。

日本と対照的に海外では着々とワクチン接種が進み、米国は12日に1億回を突破。バイデン大統領が就任時に掲げた目標から1カ月半も前倒しで達成し、少なくとも接種を1回受けたのは人口の約2割に当たる約6600万人となった。

世界最大のワクチン製造大国であるインドは、新型コロナワクチン輸出でも存在感を高めようとしていた。モディ首相は1日、ツイッターに自らがワクチン接種を受けている写真を添え、「一緒にインドをコロナのない国にしよう!」と投稿したが、その後に変異株の感染が拡大。モディ氏は17日に流行の「第2のピーク」が始まったとの認識を示し、世界から不安視されることになる。

経済正常化訴える声

各国では、経済再生の動きも本格化していた。米議会上院は6日、コロナで打撃を受けた家計や企業を支援する1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策法案を一部修正して可決。強権的な手法も駆使して感染症を制圧した中国では、5日開幕の第13期全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相が2021年の国内総生産(GDP)成長率の目標を「6%以上」に設定した。

日本も緊急事態宣言の再発令から約2カ月が過ぎ、営業時短要請に耐えてきた飲食店などから経済正常化を訴える声が高まっていた。感染者数、病床率が改善したとして、菅義偉首相は17日、再延長後の期限通り21日で緊急事態宣言を解除する方針を明らかにした。

だがそのころ、新たな脅威が表面化していた。神奈川県は16日、変異株感染者2人の死亡を国内で初めて確認したと発表。日本はその後、変異株という「嵐」に翻弄されることになる。

(31)2021年2月17日~ 医療者にワクチン接種開始

(33)2021年3月18日~ 広がる変異株「第4波」の足音

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