中国に「平和的解決」の意思あるか 台湾侵攻抑止を

台湾の蔡英文総統=台北(総統府提供・共同)
台湾の蔡英文総統=台北(総統府提供・共同)

中国は、4月の日米共同声明に自らの国内問題であるとする「台湾」が明記されたにも関わらず、批判のトーンを抑えている。声明発表後、外務省報道官名義で「米日は『一つの中国』原則を順守し、直ちに中国の内政への干渉を止めよ」と表明した程度だ。「両岸問題の平和的解決を促す」との文言を加えた日本政府の対中配慮が奏功したとみられるが、そもそも中国に「平和的解決」の意思があるかが問われている。

「平和的解決」は1972(昭和47)年の日中国交正常化の翌年に政府統一見解で出された、日本側の苦肉の策だった。正常化交渉で、中国側は「台湾は中国の一部だ」とする主張への「賛同」を要求。だが、「賛同」し台湾問題を中国の国内問題とすれば、日米安全保障条約6条に基づき日本の基地を使用する在日米軍が介入できなくなる。

このため、日本側は正常化時の日中共同声明で中国の主張を「十分理解し、尊重」することに加え、「ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と明記して中国側と折り合った。

日本が45年に受諾したポツダム宣言は、台湾の「中華民国」への「返還」を掲げたカイロ宣言の履行を促している。日本は52年発効のサンフランシスコ講和条約で台湾を放棄しており、国交正常化交渉当時、台湾の法的地位について「発言する立場にない」(政府見解)はずだった。だが、ポツダム宣言に言及することで、「中華民国」に代わる「中国」を代表する政権としての「中華人民共和国」政府に歩み寄った。

米中それぞれへの一見矛盾する表現を整理するため当時の大平正芳外相は73年の国会で中台問題を「基本的には中国の国内問題」としつつ、「平和的に解決されることを希望する」との政府見解を示した。外務省条約課長として日中共同声明の作成に当たった故・栗山尚一氏は2013年の産経新聞の取材に、日本は台湾が中国に平和統一される場合は受け入れる一方、「武力で台湾を統一しようとする場合は話が別だということを周恩来首相が正確に理解した」と振り返った。

日本はその後も中台問題の「平和的解決」を主張。日米安保条約の適用範囲を極東からアジア太平洋地域に拡大した1996年の日米安全保障共同宣言、それに続く日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直し、その後の日米同盟の再定義過程で台湾有事は「隠れた課題」(防衛省関係者)であり続けたが、日米首脳の公式文書で「台湾」に言及しなかった。

台湾情勢に詳しい東京外語大の小笠原欣幸教授は、台湾で民主化が定着して中国との統一を望まない世論が大勢を占める半面、中国が軍事力で統一を迫る今、「(日中国交正常化当時の)72年体制は変わらざるをえず、約50年前の原点に立ち返った『平和的解決』の議論は通じない」と指摘。その上で、「日本に求められるのは、外交・安全保障双方の努力で中国の台湾への武力行使を抑止することであり、それが台湾海峡の平和の維持の土台になる」と話した。(田中靖人)