【主張】東京五輪 首相は尾身発言に答えよ スポーツ界の快挙見過ごすな - 産経ニュース

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【主張】東京五輪 首相は尾身発言に答えよ スポーツ界の快挙見過ごすな

月曜の朝は快挙で明けた。女子プロゴルフの最高峰、全米女子オープンで日本の笹生優花と畑岡奈紗がプレーオフを戦い、笹生が優勝した。ギャラリーに囲まれたグリーンで抱き合い、健闘をたたえ合う2人の姿が美しかった。

日本で3人目のメジャー女王となった二重国籍の笹生はフィリピン代表として、畑岡は日本代表として夏の東京五輪に出場することがほぼ確定している。

ローマで行われた五輪種目のスケートボード・ストリートの世界選手権では6日、男子の堀米雄斗と女子の西村碧莉がアベック優勝を飾った。男子の3位、女子の2位も日本選手だった。

陸上男子100メートルでは同日、山県亮太が9秒95の日本新記録で優勝した。桐生祥秀、サニブラウン・ハキーム、小池祐貴に続く4人目の9秒台突入で、この日、10秒01の自己記録で走った多田修平も含めて同種目の五輪代表3人、リレーメンバー4人の選考は熾烈(しれつ)を極めている。

同日、体操の内村航平が種目別の鉄棒で東京五輪代表切符をつかみ、4大会連続の五輪出場を決めた。個人総合で五輪を連覇した内村も32歳、鉄棒に専念して「最後の五輪」に賭けていた。

全ての快挙に共通するのは東京五輪への思いの深さだ。国内外のスポーツ界は五輪に向け、競技と感染症対策の両面で実績を積み、結果を出し続けている。これを見過ごすべきではない。

「何のためにやるのか」

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が国会で「本来はパンデミック(世界的大流行)で(五輪を)やることが普通ではない」と述べて波紋を呼んでいる。

発言は「やるのなら、強い覚悟でやってもらう必要がある」と続き、感染対策の徹底を訴えたものだが、一部の野党などは「五輪中止勧告」と受け止めて攻勢を強め、政府・与党からは反発や戸惑いの声が聞こえてくる。

尾身氏の立場からいえば、発言は正しい。ウイルスの感染抑止のみを考えれば、ベストの選択は五輪の中止である。

ただしそれは、プロ野球や高校野球、JリーグやBリーグ、コンサートも映画も芝居も寄席についても同様だ。全てを止めれば、社会そのものが停止する。何を動かし、何を止めるか。専門家の意見を聞き、決断するのは、政治の役目である。

尾身氏の発言の中で、最も首肯すべきは「五輪をこういう状況の中で、いったい何のためにやるのか、はっきり明言することが重要だ」と述べたことだ。これは菅義偉首相に向けた言葉だろう。

菅首相は7日の参院決算委員会で東京五輪について問われ、「まずは緊急事態宣言解除に全力を挙げたい。国民の命と健康を守ることが開催の前提条件だ。こうしたことが実現できるように対策を講じるが、前提が崩れれば行わないということだ」と述べた。これでは「何のために」という尾身氏への答えになっていない。

9日には党首討論が予定されている。こうした答弁が続くようでは、いよいよ国民の心は五輪から離れてしまう。東京五輪の意義について、開催国の首相として、しっかりと語ってほしい。

コロナ禍克服の象徴に

最後の機会に僅差で東京大会出場をつかみ取った内村は、昨年11月の国際親善試合で五輪について「できない、ではなく、どうやったらできるかを、皆で考えてほしい」と語り、「選手のエゴ」「五輪ありきは許されない」などと大バッシングを受けた。

どうやったらできるか。

考え得る方策は、人流抑制などの感染対策の徹底とワクチン接種の迅速化しかなかった。それは選手にできる仕事ではなく、政府や医療界が担うべきことだった。

選手を批判の矢面に立たせてしまった反省も政府に求めたい。その上で、大会開催へのあらゆる努力を惜しまないでほしい。

むしろ「五輪ありき」で施策を進めていれば、現在の感染状況はもっと穏やかなものだったかもしれない。五輪を開催する努力は感染症との戦いそのものであり、大会は、世界が日常を取り戻す象徴となり得る。

五輪の意義の一つは人間の可能性の可視化にあり、コロナ禍における大会の成功は、その大きな可能性を示すことにもなる。

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